G.R.A.D.編で泣き崩れたお話(甜花ちゃん編)

ついにやってきた新たな空は、度肝を抜く激強サクセスストーリーだった―――

 

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※注意!

この記事はG.R.A.D.のネタバレを大いに含みます。視聴済みの方推奨です。

 

 

 

 

 

目次

1. はじめに

2. 駄弁り(限界)

3. たった数個の単語で紡がれる甜花ちゃんの本質

4. 前川涼子さんの表現力

5. おわりに

 

 

 

1. はじめに

 『Grand.Repute.AuDiton.』通称『G.R.A.D』。

 アイドルひとりひとりに焦点を当てた続編、その情報を知った時から「甜花ちゃんはマジでヤバいぞ」と戦々恐々としていた春の終わり頃。最初に実装されたイルミネと放クラの全員を観終えた時点で涙ぐんでいた私は、そのコミュの想像以上の出来に震えました。

 

エモい

マジでエモい

 

 ダイレクトにそのアイドルの本質を突く試練と、成長して乗り越えていくアイドルたち。現時点でこんなに響くくらいだから、命より大事にしている甜花ちゃんが来たら確実に死に至るとばかり考えていて早1ヶ月、唐突にXデーはやってきたのでした。

 

 

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ふぇ(絶命)

 

 

 その日ばかりは爆速でタスクを片付けて、自学の時間を明日の自分に託し、血眼で帰宅したのを覚えています。
 心の準備を整え、タオルとティッシュを用意し、覚悟を決めてプロデュースを開始。待っていたのは、想像を遥かに超える感動の物語でした。

 

 

2. 駄弁り(限界)

※ここから時系列に沿った感想と考察がごちゃ混ぜで続きます。読みにくくてごめんなさい。

 

 甜花ちゃんはいちばん大好きで、今回真っ先にコミュを観たアイドル。そもそもG.R.A.D.のコンセプト自体が大崎姉妹のド本質を刺すものなのでどう考えてもエライことになるのは目に見えてました。
 巷では「甜花ちゃんがひとりでお仕事?大丈夫かよ〜w」みたいな意見も前々からあったんですが、薄桃色を95794756481億回観てきた方が良いです。というかセレチケで【I ♡ DOLL】を絶対交換してください。甜花ちゃんはもうアイドルなんだよ…!
 だから私は甜花ちゃんが無力だとは全く思って無かったし、むしろ相当成長した姿を見られるんじゃないかとさえ思っていました。それよりも甘奈ちゃんのもとを離れたときにどうやって解決していくのが気がかりでした。


 始まってすぐに、ひとりでの大きなお仕事が降ってきます。個々に直々にオファーが来るようになったという事実、その時点で私は甜花ちゃんの2年間の歩み(ゲーム内時空では○ヶ月?)を感じられて感傷に浸っていました。
 ところが、シーズン1、2のコミュで、徐々に暗い影が忍び寄ってきます。アイドルフェスの練習についていけない甜花ちゃんは、「プロデューサーさんが大丈夫にしてくれるから」「プロデューサーさんならどうにかしてくれるよね」と、Pを頼る発言をしました。そこに、甜花ちゃん自身の意志を感じられないのです。
 思えば、一番最初のコミュの「プロデューサーさんが見ててくれるなら大丈夫だから」というセリフも、一見すればPへの絶対的信頼を感じられる暖かい言葉ではありますが、裏を返せば『プロデューサーさんがいなかったら大丈夫ではなくなってしまう』という自信の無さを表現しているようにも取れてしまうのです。


 そのときに考えてしまったのです。薄桃色での甜花ちゃんは、なぜあそこまで完璧なムーブが出来たのか。当時の私は、『甜花ちゃんは元々そのような深い洞察力を持ち合わせた子で、今まではアウトプットが少し苦手だったから上手く出来ないことが多かった』というふうに結論付けました(師の意見参考に)。そしてその駆動力として、『甘奈ちゃんへの"好き"の感情』という言葉で形容できない尊さを内包するクソデカ感情を挙げました。

bota-ohagi.hatenablog.com


 現状を顧みると、その考えはより一層合致します。甜花ちゃんは、甘奈ちゃんに代表される"誰かのため"なら凄まじい力を発揮出来ます。甘奈ちゃんに関しては、それこそ並の家族以上の強い絆と愛がトリガーのはずです。しかしながら、自分自身に対しては自信を持てずに行動できなかったのです。
 それはおそらく、「自分だけの力で解決したものでなければ自信に繋げられない」という性格を持っているんじゃないか、そしてそれが大きく影響しているのでは、と思いました。以前は甘奈ちゃんがアドバイザーで、今はPが助けてくれる。そのおかげで自分はアイドルをやれていて、自分の力では無い、と。そのPに「甜花自身で考えるんだ」と言われてしまったら、自分には何も無いと思い込んでる甜花ちゃんにとっては八方塞がりで、解決法が無くなってしまったのです。


 予選終了後、どんどん自分を追い詰めてしまっている甜花ちゃんを、私は徐々に胸を締め付けられる思いで見ていました。正確な判断・評価が自分で出来ない、自分だけでは分からない。それは「甜花はダメだから」という呪いの如く染み付いた意識に支配されていたからです。


「ちゃんと、やんなきゃ」

「ちゃんと、出来なきゃ」


 評価がわからないから、抽象的なイメージのまま、ただただひっ迫感に追われている……そんな甜花ちゃんは今まで見たことがなく、「このままじゃまずい、甜花ちゃんが壊れてしまう」という危惧を感じ、私はもうつらすぎて心がしんどくなっていました。


 救いの手が差し伸べられたのはシーズン3、Pがそんな甜花ちゃんを後押ししたことでした。

 直接行動案をアドバイスしてしまったら、例え成し遂げたとしても甜花ちゃんの自信に繋がらない。だから、「何がしたい?」と問いかけることで、「したいことなんて…出来ないのに言っちゃダメな気がして」という思いで自ら抑圧していた甜花ちゃんの心を解かし、本音を引き出す手助けをしたのだと思います。


 きっと甜花ちゃんも、心のどこかで「このままじゃダメだ」と考えていたのではないでしょうか。W.I.N.G.編と感謝祭編では、「変わりたい」という思いを糧にみるみる成長していきました。このG.R.A.D.でも、甜花ちゃん自身成長するための分岐点であることは自覚していたはずです。

 コミュの題名【Id】は"原我"という意味を持ちます。ずっと秘めていた「諦めたくない」という思いを、ここで正直に言えるようになった……先入観や抑圧から脱した、大事な瞬間だったと感じています。
 自分の意志を強く主張する甜花ちゃん、その思いの強さを肌で感じ涙腺が崩壊しました。


 そして迎えたアイドルフェス。肩で息をする甜花ちゃんはかつてない程の疲労感を示唆しパフォーマンスの凄まじさを感じさせるとともに、晴れやかな立ち振る舞いを想起させます。本当に、全力で頑張ったんだなというのを強く感じられて、その時点で涙ポロポロです。
 泣きながら、「甜花ちゃんの立ち位置は、甜花ちゃんの課題を解決するにベストな場所だったのかもしれない」とふと考えました。「テレビに映らない、ひょっとしたらいなくても気づかれないかもしれない」というPのセリフは、"誰からも評価されない"という原初の思惑(G.R.A.D.に向けた足がかり・経験)からは外れてしまうことを意味します。

 しかし今の甜花ちゃんにとって大事なのは、他者からの評価ではなく、自分の中での評価。Pもそれは分かりきっていて、敢えて口に出したのだと思います。


 甜花ちゃんは、「プロデューサーさんにチャンスを作ってもらったのに」と、周囲のサポートが無ければ出来なかったと感じてしまうあたりを未だに引目に感じてしまうところもありました。だけどそれでも、何も出来なかったわけじゃなく、最後まで諦めないで出来ました。レッスン中、休憩しようかというトレーナーの提案に少し喜びを感じつつも、自分を律し「まだやれる」と意思表明した甜花ちゃん。自分を変えるため、成長するためにやり抜くんだという強い意志を、ひしひしと感じられました。


 そしてシーズン4コミュの最後のセリフ。

 

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「甜花……頑張った……!」


 この言葉自体は、これまで何十回何百回と聴いてきたものです。しかしながら今回の言葉は、明らかに一線を画すほどの達成感、歓喜、感動に満ち溢れていて………
 この時点で私はもう泣き伏していて、2年を経てついに甜花ちゃんにとっての大きな課題が解決された瞬間だと思いました。

 これから先、ひとりでの仕事が多く舞い込んできても、今の甜花ちゃんなら乗り越えられるはずです。それは「もう失敗しない、落ち込まない」という意味では無く、「クリアするためのスキルを身につけた」という意味での経験値を得たからだと考えています。この経験が、"大崎甜花の答え"のひとつなのだ、と。決して終着点ではありませんが、ひとつの大きな区切りになったな、と感じたのです。


 G.R.A.D.優勝後、甜花ちゃんは感情を爆発させるような表情を見せました。笑顔というよりも「優勝できて良かった、甜花は頑張れたんだ」というような嬉しさや安心感に近く、泣き崩れたかのような錯覚さえ感じました。


「みんな、応援してくれて……」
「だから、優勝できたの……みんなが、いたから……!」


 笑顔で語るそのセリフには、周囲への引け目などありませんでした。大切な人たちへの感謝と自分が頑張れたという自信、そして心からの喜び……甜花ちゃんの新しい空が、広がった瞬間でした。

 

 

3. たった数個の単語で紡がれる甜花ちゃんの本質

 

 先程も少し触れましたが、甜花ちゃんのG.R.A.D.編はコミュタイトルに込められた意味がとても重要だと感じました。意訳と私の解釈を以下に書き綴ります。

 

 

  • プロローグ【I do】

"甜花、やってみる"
 doはよく強調の意味で使われます。ひとりでの大舞台、甘奈ちゃんたちが居なくとも頑張りたいという甜花ちゃんの決意が込められているのではないでしょうか。

 

  • シーズン1【Idel】

"空っぽ"
 idelは「空の、無駄な」という意味です。このコミュでは「プロデューサーさんが大丈夫にしてくれるから」と、誰かが助けてくれるという他人本位の心内を口にします。それは、「甜花は何も出来ないから」という、自分自身ではやりようがない空っぽの意志が漏れ出ていたようにも思えます。

 

  • シーズン2【Ideally】

"理想的に"
 そのままの意味です。甜花ちゃん自身は何も出来ないけど、他の人の助けがあるから頑張れる。自分では限界だと思っているから、それが自分の理想なんだ、と無意識に考えているのかも…?

 

  • シーズン3【Id】

"原我"
 idは精神分析学におけるエス(原我)と同義とされ、エゴ(自我)の基底をなす本能的衝動であるそうです。自我自体も意識されないようなヒトの行動原理の概念ですが、その自我自体はエスからの要求を経て形成される、とのこと。ぅゎ哲学っょぃ
 先程も触れましたが、甜花ちゃんの「諦めたくない」という思いは、挫け始めた最初から抱いていた深層での情動だったのではないでしょうか。これまでの経験・自信の無さから怖くなり抑えてしまっていたけれど、Pの助けもあって正直に吐露できるようになりました。

「変わりたい、頑張りたい」

 アイドルになったときからずっと抱いていた思いに、迷わずに向き合えた瞬間。だから、この言葉がコミュタイトルになっているのかなと思いました。

 

  • シーズン4【Ideal】

"理想"
 おそらく、客観的に見たこの物語の最高の理想は、「アイドルフェスで好成績を残し、センタークラスの活躍を見せ、G.R.A.D.への完璧な足掛かりを組み、優勝へ繋げる」ことだったのでしょう。本当に完璧に上手く行けば、の話ですが。
 でも、甜花ちゃんとPにとっての理想は、ちょっと違うかたちだったのかもしれません。


「甜花ちゃんがひとりで成長すること」
「甜花ちゃんの自信を育むような経験にすること」


 もしも一般的なお話なら、ここから甜花ちゃんが凄まじい成長を遂げ、センターをもぎ取って活躍するようなものになっていたでしょう。でもそれは甜花ちゃんの本質からはかけ離れた、"安直なサクセスストーリー"に成り下がってしまいます。
 大事なのは踊った場所では無く、踊った経験。最後までやりきったという揺らぎない事実こそが、甜花ちゃんにとっての理想のかたちだったのです。

 

  • エピローグ【identity】

"自分らしさ"
 号泣必至の優勝コミュが明け、次に始まったのは甜花ちゃんのいつも通りの日常。「お昼寝してていい…?」とお願いする甜花ちゃんは、成長したり変わったりする一面があっても変わらない"甜花ちゃんらしさ"です。
 これまで約束でも「充電、完了…!」と嬉しそうにしていた甜花ちゃん。甜花ちゃんがお休みする意味は以前のような「遊びたいから」では無く、「いい仕事のため、いい遊びのため」へと昇華されました。それでも、ひとりでの大仕事を成し遂げた後だって甜花ちゃんは甜花ちゃんという揺らぎない平和が続いているんだ、とほっこり出来たのでした。

 

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 変わるもの。変わらないもの。アルストロメリアに2年間ずっと共通するコンセプトは、G.R.A.D.編でも健在でした。そして、幸せそうな眠り姫の言葉で終わるこの物語は、やはりひとつの"大崎甜花の答え"なのだろうな、と感じるのでした。

 

 そして、ご覧いただいてわかるように、コミュタイトルの全てに「id」というスペルが共通しています。

 そこから「idol」という単語を連想させるのは容易で、【I ♡ DOLL】のときのようにシャニマスの言葉選びの上手さに脱帽します。限られた単語からピックアップし、かつコミュの内容にも繋がるようになっているのはまさに芸術です。ノーベル文学賞シャニマスしか勝たん。一生勝てない。

 

 

4. 前川涼子さんの表現力

 

 甜花ちゃんの声を担当している涼子さんの表現の凄さ(ずっと以前からりょんちゃんのスゴさは感じてる)にも打ち震えました。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


度々登場した、沈黙のみの文章。だけど甜花ちゃんは、文字に起こせないけれども声を発しています。吐息、呼吸、吃り、躊躇い。そこからは甜花ちゃんの不安や焦り、心配、葛藤がひしひしと伝わってきます。言葉だけじゃなくても表現することは出来るという、涼子さんの"役者"としての素晴らしさを肌で感じました。誰よりも甜花ちゃんを理解していて、表現してくれるひと。それが涼子さんなんだなぁ、と……。本当にありがとう、りょんちゃん………


(まだりょんちゃんのチョクメを見たことが無い人はこの機会にぜひ!!近いうちにG.R.A.D.編の感想も来ます!!それ以外にもりょんちゃんのありのままを見られる最高の文明です)

ani.chokume.com


 そしてこのセリフ(文字列)の場面を見た時、聴いた時ほど、「ボイス収録が間に合っていて良かった」と感じたことはありません。そのような言葉以外の表現も含めて感動がひとしおのモノになっているわけで、きっと読み物だとしたら印象は変わってしまっていたと思います。シャニマスだからこそできるエンターテインメントなんだなぁと、しみじみ感じるのでした。

 

 

5. おわりに

 

 スプパも2ndも無くなってしまって、失意の中やってきたシャニマス2nd Anniversaryキャンペーン、そして待望の続編。そこには昨今の暗い世情を吹き飛ばすような快晴が広がっていました。素晴らしい物語とアイドルたちの輝きを見せ続けてくれるこのコンテンツに、すごくすごく元気を貰っています。

 ありがとうシャニマス、ありがとう甜花ちゃん。

 これからもずっと、応援しています。

 

ボタ餅