アルストロメリアが生き甲斐になってる泣き虫オタクのお話

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<<<<<注意>>>>>
 この記事は考察ではなくただのオタクの思い出話と自分語りです。個人的な話をかなりぶっちゃけています。ネガティブな気持ちも吐き出しています。不快に思う方もいるかもしれないので、自己責任でお願いします。不安な方はここでブラウザバックを。

 ちゃんとした考察だけ読みたい方は下のリンクへ飛んでください。

 

bota-ohagi.hatenablog.com

 

 

 

 


はじめに

 シャニマス3rdLIVE福岡公演が終わりました。

 内容についてはもはや語るまでもないので一部に留めますが、本当に素晴らしいライブでした。私の人生で最高のライブはデレ7th大阪とバンナムフェスなのですが、人生でいちばん泣いたライブは間違い無くシャニ3rdだと確信しています。後にも先にもこんなに泣くライブは無いだろうと思えるくらい。

 週が明けて月曜日、【アンカーボルトソング】が開始。これについての感情は先に述べたブログに綴ったのでここでは省略しますが、自分の中でとても大切なコミュになりました。今この文字を打っている最中も泣きそうになるくらい。

 

 私は泣き虫になってしまいました。甜花ちゃんたちのこと、アルストロメリアのことを考えたら、いつでもどこでも涙が出そうになります。家の外で『Anniversary』が聴けません。

 どうしてこうなっちゃったんだろうって、今のうちに整理しておきたいなと思って、懲りずにまた筆を執りました。これはただの備忘録です。なんの生産性も無い、自分の感情の整理のための駄文です。それでも読みたい方のみ、読んでくだされば幸いです。

 

 

 

ホントは招待論文の締切が迫っています。こんなことをしている場合ではない。助けて。

 

 

 

研究生活のオアシス

 そもそも去年の私は、シャニマスに相当依存しまくっていたんです。

 

 卒業研究があまりにも多忙で大変で、1週間に1度は泣くくらいメンタルが弱っていました。

 スプパも2ndも消し飛ばされて、イベントも楽しみも何もかも無くなって、残ったのは山積みの解析データ処理ばかり。研究の特性上ほぼ毎日作業する必要があり、コ○○だろうが「構わん、行け」とブラック企業並みの基本的人権を失った生活をしていました。春は就活、夏は熱中症で倒れ、秋は月2ペースで寝込みました。幼少期からの夢だった研究とはいえ、世情も相まって鬱病になってもおかしくないほど辛い日々を送りました。

 唯一の楽しみが、空き時間や家でプレイするシャニマスでした。3年目になってますます美しくなるシナリオ達。新しい色が加わって輝きが増すアイドル達。研究一本でバイトも出来なくなり殆ど課金もできなくなった私にとって、無限にやり込むことが出来るこのゲームが唯一無二のオアシスでした。

 特にアルストロメリアは3月上旬の【薄桃色にこんがらがって】が過去最大級のシリアスシナリオなぶん感動がとんでもなく大きくて限界になってたし、6月中旬のG.R.A.D.編追加の際は大崎姉妹オタク抹殺計画の如くソロの甜花ちゃん甘奈ちゃんへの試練と克服の物語が尊すぎて死んでました。あのふたりに関してはシャニマス開始当初からの課題にようやく決着をつけることが出来たものだったので、それはもうおしまい人間になりました。

 

↓おしまいになった結果出来たもの

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 Viアルストロメリア人権の時代も来て、それまでグレ5と6を行ったり来たりしていた自分が6常駐出来るようになったりと、ゲーム面でも愉しさを覚えてきてますますやり込むようになりました。

 単純作業中はシャニマス楽曲を無限リピートし、辛い時は甜花ちゃんに励まされ、りょんちゃん(前川涼子さん)のチョクメで生きる希望を貰い、月1の『まだこれ』に救われながら、研究とシャニマスの日々を送りました。

 

ch.nicovideo.jp

楽しいチャンネルなのでみんなで観ようね

 

 

希望の夜明け、MUSIC DAWN

 10月31日と11月1日、それは長い夜に苛まれたシャイニーカラーズが夜明けを迎え、輝きを取り戻した日でした。ずっとみんな待っていたステージがそこにあって、私はただひたすらに涙を零しました。【薄桃色】とG.R.A.D.を乗り越えたアルストロメリアだからなのか、『Bloomy!』にはまた新しい意味が加わったように思えて涙し、『FUTURITY SMILE』2番冒頭甜花ちゃんという完全解釈一致な歌詞と歌唱を目の当たりにしてデカい声を上げ、『シャイノグラフィ』の天才的演出を見て全身鳥肌が止まらなくなりました。ライブの楽しさを久々に思い出せた日です。

 

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パート振り分けた人に金一封贈りたい


ついに紡がれた大崎姉妹の過去

 MUSIC DAWNと同時に始まった【流れ星が消えるまでのジャーニー】。待ち望んでいた大崎姉妹の過去をめぐるストーリーは、柔らかい月光を想起させるような素敵で心温まる物語でした。甘奈ちゃんが甜花ちゃんに全幅の信頼を置く理由や、甜花ちゃんのかっこいい面、デビ太郎の存在の大きさなど、アケマスからの大崎姉妹オタクとしては完全に墓場になるくらいドンピシャで死に至るお話でした。MUSIC DAWN効果もあっておしまいになりました。
 一生大崎姉妹のオタクでいたい。ふたりの幸せ空間をずっと見ていたいと思うようになりました。来世は大崎家の壁になって聖域を護りたい。

 


葛藤

 しかしこの頃から、受け取ったエモの感情をお返しするすべが無いことに胸が痛むようになりました。研究で忙しいのは事実ですが、それを言うなら社会人で働きつつ作品を投稿している神絵師や神ss作家はたくさんいます。楽屋花企画を成し遂げる人も、人を募って動画や音楽を創り上げる人も。

 でも自分は、何もできませんでした。以前はあれだけ本気になれたのに、その過去が嘘のように。

 

↓頑張ってた頃のお話

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 ssを書いている人間なので、本を出して活動的になりたいと思ったこともありましたが、以前創作と同人誌頒布に関しての話で非常に嫌な思いをしたことがあり、どうしても抵抗が生まれてしまいます。私の作品はあまり万人受けしないのでpixivの評価も低くて、手に取ってもらえる気がしないというのもありますが。

 

 それがきっかけで距離をとったコンテンツも、完全に他界したコンテンツもあった時期だったので、この時期はとにかく不安になってしまっていました。「今までみたいに、いつかシャニも切り捨てる自分がいるんじゃないか」と怖くなってしまいました。

 加えて12月〜翌年1月は卒論発表と論文執筆、さらには学会発表が控えていた時期で、研究に対するストレスもピークに達していました。色々と限界が近く、精神が病みそうになっていた頃。

 

 

 救世主の如く、あの曲が現世に産み落とされたのです。

 

 

『Anniversary』との出会い

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 2020年12月9日。

 

 私は、救われました。

 

 G.R.A.D.の先に見つかった決意の歌。3年目の3人が奏でる愛の歌。

 『Anniversary』はアルストロメリア史上最強の涙腺破壊楽曲として降臨し、私の荒んだ心を浄化してくれたんです。

 初めてフルバージョンを聴いた日は、その驚くべきコード構成壮大なインスト3人の神々しくも優しい歌声に感情が天を衝き、深夜まで泣き続けて眠れなくなるほど"""到達"""していました。今までも楽曲を聴いただけで涙が出ることはよくありましたが、『Anniversary』に関しては歌詞を見るだけで号泣するという前代未聞の症例が現れ自分でも困惑するほどでした。これまでとは全く比べ物にならないくらいの破壊力を持っている世界最高の楽曲になってしまったんです。

 

 そして思いました。自分が何もできないとか、周りがどうとか、関係ないや、って。ただ、アルストロメリアを好きでいよう、ずっと応援しよう、その気持ちだけは絶対失わない、失いたくないって確信できたんです。壊れそうな心を支えてくれる、生きる希望になってくれているって、実感したんです。

 

 

 

 しばらくは感情が大洪水した日が続いて、次の日なんて大学で作業中に突然思い出して泣き出してしまうほど。「精神壊れた?」と同期に勘違いされてラーメンを奢ってもらいました。違うんだごめん。いや精神は壊れてたけど。

 

 


大学卒業、そしてようやく待ち望んだ2ndライブ

 アルストロメリアパワーで復活した私は狂ったようにシャニマスと研究に明け暮れました。

 

 大感情大崎姉妹ssを書き上げ、

 

www.pixiv.net


 人生で初めて神棚を作って大崎姉妹の生誕を祝い、

 

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 そのままの勢いで学会発表を倒しました。頑張りすぎた結果こいつに招待されてしまい論文を書くハメになっています

 

 

 さらに今年1月には初めてグレ7に昇格しました。シャニマスに本気になれていると実感するための私自身への証明ができた瞬間でした。

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 卒論を学校に提出した後も卒業式のある週まで研究を続け、ついに1年間の奴隷学業の集大成から解放されました。生きるって素晴らしい。

 

 そしていよいよ、人生最高のご褒美が待っていたのです。

 

 

1年越しの2ndLIVE

 待ちに待った2ndLIVEが始まりました。万全な対策により有観客が可能となり、2日目の現地チケットを勝ち取っていた私は初日からうずうずが止まらない状況でした。

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連番の友人が「『Ambitious Eve』の空っぽい」って言っててエモでした

 旧友と久々に会って話したり、まだ会ったことの無い人と初エンカしたり、コミュの内容を語り合ったり。ずっと出来なかった"当たり前"が出来るようになったことで、すでに胸がいっぱいになっていて。会場に入って席に着き、Overtureの音楽を聴いているだけで自然と涙が溢れてきて。実に1年ぶりとなる現地参戦、辛かった1年をシャニマスに頼って生き抜いた私にとって、シャニマスのライブに来れた、それだけで心の底から嬉しかったのです。

 さらにアルストロメリアの披露曲は『Bloomy!』と『ダブル・イフェクト』。

 『Bloomy!』は2年目のアルストロメリアをまさに象徴する楽曲で、ファン感謝祭編や【薄桃色】のストーリーにリンクしています。遠回りしてもいい、ずっと信じ続けていたい。今までのコミュたち、言葉たちが脳裏をよぎっていき、私の視界はたちまち霞んでしまいました。続く『ダブル・イフェクト』は対照的で、あの時点では私はG.R.A.D.で成長した先の姿だと感じていました。過去(Bloomy!)と未来(ダブル・イフェクト)、3年分のアルストロメリアの物語をいっぺんに摂取した私は大洪水の如く泣いていました。

 生きてて良かった。頑張ってきて良かった。シャニマスに支えられて乗り越えた1年間、辛く苦しい生活が全て報われたような気がしました。

 

 感情になりすぎて3月の終わり頃に初めて聖蹟桜ヶ丘に行きました。卒業旅行

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来ただけで泣きそうになった

 

 

新社会人、そして『Anniversary』の初披露

 4月1日、晴れて新社会人となった私。自分の夢を追うための一歩を踏み出したとともに、2日後に控える3rdライブ名古屋公演への期待に胸を膨らませていました。

 新生活の環境がどうなるか分からなかったため応募することが出来ず、両日配信組。それでも、ついに邂逅する『Anniversary』の初披露がとても楽しみでした。

 

 

 いや正直に言うとメチャクチャ怖かった。自分を救ってくれたこの曲を初めて目の当たりにするとどうなってしまうのか全くわからない。感情が壊れるのが怖くなって2月くらいからこの曲を一度も聴いていない状態だった私は、予習プレイリストにも入れることができず、「聴きたいけど聴きたくない」、矛盾する気持ちを抱えたまま3rdLIVEが始まってしまいました。

 

 ユニット曲トップバッターのイルミネの直後、"マ"の一音が聴こえた瞬間に死を悟ります。まさかのユニットシャッフルメドレー、つまりいつ『Anniversary』が飛んでくるかわからないという恐ろしい事態。そんな危惧をよそに、目の前に広がる天国に私は心を奪われます。

 たった2週間しか経っていないのに爆上がりしている歌唱力と表現力。何よりも、ガルディエーヌシリーズを身に纏ったアルストロメリアが、本当に神々しかったんです。

 

"例えば二度と飛べなくても キミのためにずっと笑っていよう"
"例えば翼失っても キミのもとへそっと舞い降りるから"

 

 翼の無い3人が歌う詞は、あまりにも特別で大きな感情が込められていました。成長したアルストロメリアの、優しさ、強さ、美しさがひしひしと伝わってきて、2ndLIVE以上に感情が揺さぶられていました。ボロボロと泣いてよかったと感傷に浸っていたらいつもの放クラAED、どうしていつもそうなんだ

 

 そしてライブは進み、純白トロイメライの迫力に鳥肌を覚え、いやぁ強かったぁとニコニコしていた私を、ついにあのピアノ音が襲いました。

 

 

 

 レベルが違う。

 

 感動したとか、泣いたとか、そんな稚拙で単純な言葉で表現することを恥じるほどの、とてつもなく大きな感情

 

 ARの演出も相まって、3人のステージはまさに天界のようで。穏やかな笑顔、光る涙はまさに天使のようで。

 脳裏を走馬灯のようによぎるのは、アルストロメリアとの3年間。初めて出会った日のこと、初めてW.I.N.G.を優勝させてあげられた日のこと、初めてのユニットシナリオ。1stLIVEの景色。ファン感謝祭、クエストロメリア、薄桃色、G.R.A.D.、流れ星…………

 一緒に歩んだ旅と思い出が、全部全部流れていって。何も見えなくなるくらい、息が出来なくなるくらい、私は泣き崩れていました。

 Cメロ、宇宙からの光のシャワーと観客席の雲、浮かび上がる光球に、私は天上の世界に来てしまったのかとさえ思ってしまうほど。

 そこから先はほとんど記憶がありません。MCはまともな意識を保てていません。会場にいたら大声で泣き叫んで退場してました。家で良かった。

 

 ありがとうアルストロメリア。ただひたすら感謝の言葉を口にしていました。この曲を観れて良かったって、生きてて良かったって心の底から思えました。

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当時



 でも直後の『天塵』はガチの禁止カードです。あとその日の通話であさひPふたり死んでるのを傍目で眺めてたら次の日私が死にました。どうして?

 

 

急転直下、大波乱の東京公演

 新人研修に明け暮れる日々、私は東京公演を糧に仕事に励んでいました。掴んだチケットはday2、アルストロメリアが欠けている日でしたが、先日のセトリを浴びることがあまりにも楽しみでした。

 新社会人になったばかりなのに3周年記念Pカップはモチベーションが上がりまくり、ライブで受け取った感情と感謝の気持ちを全力でぶつけ、初回以来の大崎姉妹ダブル金称号を達成。結果発表時は嬉しくて涙が出るくらいでした。通話で介護してくれたVenus!の皆さん、本当にありがとうございました。

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名古屋公演で貰った感動へのお返し、少しはできたかな

 


 万全の状態、万全のモチベーション、3周年を祝う歓喜の中、席も判明してライブはもうすぐそこ!

 

 

 だったのに。

 

 

 またしても非情な宣言、突然の無観客。自分が行けないことのショックはもちろん大きかったのですが、ここまで頑張ってきた演者の皆さんのことを考える方がつらくて、行き場のない怒りと悲しみに暮れました。こんなんで1万円返ってきても何も嬉しくない。本来配信は自動的に観れるようになっていましたが、せめてもの応援だと思って敢えて視聴チケットを購入し、モヤモヤした気持ちを必死に抑え込んで当日を迎えました。

 

 でも演者さん達は、そんな暗がりを吹き飛ばすくらいの輝きを見せてくれました。day2の大崎姉妹『Anniversary』は"ふたり"という歌詞に新たな意味が加わった気がして、お互いのために、そしてここにいない千雪さんのために届ける歌のように感じられました。アルストロメリア離れてても繋がってるって、強く強く感じた瞬間でした。

 

 

 

 

でもあなた大崎姉妹のソロ両方拾えてないんですよね?????????
悲しいので大崎姉妹百合小説を書きました。地産地消

www.pixiv.net

 

 


最後の空

 5月は仕事が本格化。ゴールデンウィークウマ娘にどハマりしたせいで一気に忙しくなりましたが、最後のご褒美のために毎日頑張ることができていました。

 

 ツアーの終着点、3rd福岡。そのday1のチケットが私の唯一の現地参戦だったからです。

 移動には苦手な飛行機を使う必要がありましたが、『Spread the Wings!』してたら克服できました。いざ人生初九州。

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 1st、2ndと続き、3rdも現地参戦が叶いました。SHHisの初舞台も目撃できるし、何よりも『Anniversary』をようやく現地で立ち会うことができる、それがいちばん嬉しくて、怖くて、楽しみでした。

 お察しの通り、もはや絶対に外では聴けない曲と化しており、感情のボムは目も当てられないほど肥大化した状態。明日の飛行機にさえ間に合えば帰れるし月曜日は運良く代休が使えました。つまり死んでも良いということです。意気揚々と会場へ乗り込みました。

 

 

 


 自分の席に座った瞬間に泣いてました。

 

 ずっと画面の外から眺めるだけで、行けるはずだったライブは消えて。もどかしくて、悲しくて、それでもようやくここに来れたことが、本当に嬉しくて。壮大なOvertureの音楽と映像、その光に包まれて大号泣していました。始まる前なのにコンタクトが外れかけました。

 自身2度目の現地『ダブル・イフェクト』はガルディエーヌシリーズを直接観たことが初めてというのもあってバケモンレベルに感情が昂り、歌詞と歌声の刺さり方が尋常じゃなくなりました。あとダンスがやっぱり可愛すぎるんです。アルストロメリアの中で一番好きなダンスです。BDでは配信のカメラ外のところをもっと映してほしい。

 滞りなく進むライブはついに『純白トロイメライ』へ。この曲も現地で聴くのは初めてだったのでめちゃくちゃ高まったのですが、この次に死ぬことがわかっているために気が気じゃなく、頭の中はすでにぐるぐるでした。こんがらがってる。

 

 曲が終わって刹那の静寂。「ふぅーっ………」と、大きく深呼吸をしました。これを聴くためにここまで来たんだ。ちゃんと見届けよう、その決意を胸にして、私は3色のペンライトを手に持ちます。

 

 ペンライトを振る手は、イントロからすぐに止まっていました。

 タオルは目元から離すことができず、マスクは既に鼻水だらけ。かろうじて残っている正気が、音と、声と、光を捉えていました。

 

 『Anniversary』。私を救ってくれた曲。私が世界で一番好きな曲。現地で観る景色は配信とは全然違っていて、自分が本当に天国に来てしまったかのような錯覚に陥って。歌詞ひとつひとつが胸に響いて、3人の笑顔が眩しくて………。

 

 私は、このために生きてきたんだ。この曲に出会うために生きてきたんだ、って。そう思えてしまうほどに、目の前の天国は素晴らしい景色でした。

 

 曲が終わった後、顔を上げることができなくなってしまって、うずくまってタオルに顔を埋めることしかできませんでした。MCを聞きたいけど一個も頭に入ってきません。止まらない感情に包まれて、ずっとずっと泣き続けていました。

 

ありがとうアルストロメリア

ありがとう『Anniversary』。

私は、幸せです。

心の中で、そう叫んでいました。

 

 


【アンカーボルトソング】

 一夜明けて、福岡day2。飛行機から降りて家に向かう途中に、あの予告を観てしまいます。

 

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 もう許してくれよ。

 

 【薄桃色】並みの衝撃。"変わること"と"変わらないこと"に再び直面しなければならないのかと頭を抱えながら帰宅しました。この後どんな気持ちでライブを観ろと?

 

 ですが、そんな危惧も吹っ飛ぶくらい、千秋楽は素晴らしいものでした。

 『ダブル・イフェクト』も『Anniversary』も、過去最高のクオリティと断言できるほどの完成度。昨日会場で観た時と同じくらいの涙を流し、最後の披露を見届けました。

 『Anniversary』Dメロ、「これからの未来へ続く道を」と笑顔で高らかに歌い上げた甜花ちゃんとりょんちゃんを、一生忘れることはないでしょう。あの曲、あの歌詞を笑顔で歌えるって、本当に素敵だなと思います。そこへ至る道のりと努力と成長が尊くて美しいです。あとリフレクトサインの指差しガチ顔イケメン最強甜花ちゃんは神

 大トリの『Resonance+』は言うまでもなく、スタッフのサプライズにより一斉に涙声になるシャイニーカラーズのみんなの歌声を聴いた瞬間に感情が爆発しました。そこに至るまでの全てのセットリストも含めて、人生で一番泣いたライブになったと確信しました。

 

 ベロベロに壊れるまで飲みまくって、アルストロメリアの素晴らしさに酔いまくった翌日。ついに【アンカーボルトソング】と対面します。

 結論を言えば、アルストロメリアとしても、甜花ちゃん・甘奈ちゃん・千雪さん個人としても、集大成と言って過言ではない素晴らしいコミュでした。後者については、G.R.A.D.を経てアイドル個人として成長している証をしっかり実感できる描写があったことがとても印象的でした。そして、その上で新たに生まれた、"それぞれの気持ちやファンとの距離感が離れ離れになってしまうこと"という課題に3人で立ち向かい、アルストロメリアとして新たな一歩を踏み出したことが非常に綺麗な作品として紡がれています。ファン制作のスライドは3年間のアルストロメリアの軌跡を走馬灯のように映し出し、伸びるビルは未来への希望を示唆するに足る演出でした。

 過去と未来、ユニットとソロ、その全てを丁寧に描写する今作は、間違い無くアルストロメリアの集大成と呼ぶにふさわしいシナリオでした。これまでアルストロメリアをひたすらに追ってきた私としても、かの【薄桃色】を超えたと思えてしまうほどに、素晴らしく、愛おしく、尊く、美しい物語でした。

 

 3rdAnniversaryから、私は「今年はシャニマス第2部だ」とずっと感じていました。

 【明るい部屋】で明るみに出た283プロの裏側、遂に揃った7色の光、G.R.A.D.を経て成長したアイドルたち……4年目のシャニマスは大きな転換期を迎え、これまでとは一味違う空を見せてくれるのではと期待していました。【アンカーボルトソング】は、その期待を大きく上回ってくれたのです。『G.R.A.D.によりソロでも輝きを増した3人のそれぞれの道』『時間経過に伴うお互いの距離感・ファンとの距離感』『過去(スライド)と未来(工事現場とビル)の表現』など、心を動かされるさまざまな情景が描かれており、【薄桃色】とは全く違うベクトルでの感動を与えてくれました。私にとってはまさに"第2期のアルストロメリアシナリオ"だと感じられたのです。特に、福岡公演の直後でアルストロメリアへの感情が凄まじく大きくなっていた直後に摂取するには過剰投与すぎるほどの高濃度大感情シナリオでした。

 案の定、観終わった直後はあまりの感情のデカさに完全に放心してしまい正気を保てなくなっていました。代休取っておいてよかった。仕事終わりから深夜にかけて観てたら一睡もできなかったでしょう。そして、今の気持ちを整理しなければと思い立ち、実に1年ぶりにブログの新規ページを開き、読書感想文を書いたのでした。

 

 

 愚かなことに、まだこの時までは、アーカイブ視聴でとんでもないことになるなんて知る由もありませんでした。

 

 

 

それは、アルストロメリアの集大成

 幸運なことに、シャニ3rdは配信を1週間アーカイブで観ることが出来るという破格のおまけが付いています。好きなところを好きなだけ何度でも味わえる神システムにあずかって、私はday2の『リフレクトサイン』と『Resonance+』ばっかり観てました。勝てない。

 わかる人がいるかわからないんですけど、逆にアルストロメリアのところが観れないんです。感情が爆発してまともでいられなくなるのがわかっているので、感想文執筆もそれどころじゃなくなってしまいます。「書き終わってから、同時視聴のときに観よう」と考え、週末までの完成を目指していました。

 なんとかギリギリ書き終えて、満を持して望んだday2アーカイブ同時視聴。

 

 『Anniversary』が、バケモン曲になっていました。

 

 この曲の歌詞が、【アンカーボルトソング】をなぞっているようにしか思えなかったからです。

 

"離れてても私たちつながってる"

は、3人で再確認できた、大切なものを守るための決意。

 

"それぞれに願い それぞれに迷い"

"それぞれに出逢い それぞれに憂い"

は、アルストロメリアの3人の様子でもありますが、SNSでのファンたちの様子そのものを表しているように感じられました。アルストロメリアに一緒にいてほしくて、出演者との匂わせにモヤモヤして、好きだった頃のアルストロメリアを回想して……みんなアルストロメリアが大好きだからこそ、別々の場所でさまざまな感情に苛まれていました。もちろん、私自身も。


"でも最後はひとつだから"、そうアルストロメリアの3人が教えてくれた、明るい未来への誓いです。それぞれの道を歩みつつも、いちばん大事なものは変わらないって、ライブでもシナリオでも教えてくれました。


"散ることのないメモリー"

はまさしくスライドのことであり、アルストロメリアがその一瞬一瞬で見せてくれる"思い出"です。決して色褪せることのない時間。いい時も悪い時も、全部全部かけがえのない時間です。毎日がアルストロメリアの記念日なんだ、って、この曲とこのシナリオに気付かされました。


"護りたい あなたとの毎日を"

「あなたとの毎日」とは、甜花ちゃん・甘奈ちゃん・千雪さんが一緒に過ごす時間でもあり、ファンと共に過ごした過去の"思い出"のこと。

 

"これからの未来へ続く道を"

過去も大切。今も大切。そして、これからの未来……青空へ伸び続けるビルのように、アルストロメリアはこれからもずっと変わり続け、成長し続けます。そんな未来も大切にして輝き続けるんだ、って教えてくれました。最終日、この詞を笑顔で高らかに歌い上げたりょんちゃんが、あまりにも眩しくて。

 

 3年間の歩みと、【アンカーボルトソング】、全ての景色が繋がりました。コミュの言葉と風景が頭の中に流れて、これまでのライブの映像も蘇ってきて、今画面に映っている3人のステージも入ってきて。全ての記憶と想いがぐるぐるとせめぎ合って溢れ出して、私の感情は完全に崩壊してしまうのでした。

 

 私は、アルストロメリアの物語を享受するために生きているんだ。これまでも、これからも。

 ずっと追い続けよう。応援し続けよう。自分にできることはちっぽけだけど、好きの感情は一生抱き続けよう。

 

 ブログに『Anniversary』の感情を加筆する私は、ぐじゅぐじゅに泣きながらもそう誓ったのでした。

 

 

 

 

おわりに

 こんなクソ駄文を最後まで読んでくださりありがとうございました。読み辛いところや気持ち悪いところ等々お目汚しなところもあったかと思います、申し訳ありません。

 この文を書いてるだけでも泣いちゃうくらいには限界です。本当、アルストロメリアが大好きなんだなって再認識できました。

 

 2ndから3rdにかけてみっちりと詰め込まれたシャイニーカラーズの大躍進。自分にできることはちっぽけだけど、これからも彼女たちを応援しよう、好きでいようと改めて思えた4ヶ月間でした。

 以前から涙もろすぎると友人たちに煽られていた私でしたが、シャニマスのお陰でますます重症化していると自覚しています。それはきっと、辛かった日々をアルストロメリアに助けてもらったから、素晴らしい物語を提供してくれたからなんだろうな、って思います。

 むしろ幸せです。好きなコンテンツを、好きなアイドルを、泣くほど愛せてるのかな。そう自分に言い訳しています。それで良いんです。

 

 

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 これからの未来も、素敵な嬉し涙を流せますように。

 

 

ボタ餅

アンカーボルトソングに感情を破壊されたお話

『アンカーボルトとは、木材や鋼材といった構造部材、もしくは設備機器などを固定するために、コンクリートに埋め込んで使用するボルトのこと。
(中略)コンクリートに取り付けられた構造部材や設備機器が、分離・浮遊・移動・転倒することを防ぐ役割をもつ。』

(Wikipediaより引用)

 

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 目次

 

 

 

はじめに

 3rdLIVE福岡公演day1、告知でついにやってきたアルストロメリアの新イベントシナリオ。翌日にTwitterで公開された予告の時点でまたヤバい内容と恐れ慄き、【薄桃色にこんがらがって】が脳裏をよぎりました。もう許してくれよ

 DAY2の翌日覚悟を決めて視聴するも、【薄桃色】とは別ベクトルのしんどさ、紡がれる感情表現の美しさ、アルストロメリアの尊さにもう本当に感情が崩壊し、狂い、3rdLIVEで涙を枯らしたにもかかわらず声を上げて泣きました。【アンカーボルトソング】は、今までのアルストロメリアの歩みの総集編であり、そこから新しい一歩を踏み出した転換期でもあったのです。3rdLIVEでシャニマスへの愛に溢れていた私の涙腺を破壊するにはあまりにも容易い一撃でした。

 今作は非常に多くの要素が詰まっており、視聴を終えた直後が感情がこんがらがって何も手につかなくなるほど。「これは言語化して整理しないとまずい」と察し、この記事に至ったわけです。またかよ。

 ↓薄桃色を言語化した感想文はこちら

bota-ohagi.hatenablog.com

 

 

※注意

①以下の本文ではカギ括弧について次のように区別しています。

「」……コミュ内、ゲーム内の台詞、またそれに準ずるもの

『』……私が勝手に想像した読み取れる心情や感情表現、その他解釈

②ゲーム内のプロデューサーのことを、敢えて”シャニP”と呼ぶこととします。

本記事には個人の見解が多く含まれているため解釈違い等あると思いますが、どうかご容赦ください

 

 

アルストロメリアとしての今作のテーマ

 

着眼点が大きく変わった、“第2期のアルストロメリアシナリオ”

 今作の注目すべき点は"ツイスタを通して見るアルストロメリア"、すなわち"外から見たアルストの印象"というテーマが主体となっていることです。


 これまで描かれてきたアルストロメリアのイベントストーリーは、ある問題に対してのユニット内(もしくは個人向け)の悩みが中心でした。【薄桃色にこんがらがって】で描かれたのはアプリコットを巡るメンバーのぶつかり合いです。これまで衝突を避けてきたアルストロメリアが、「いい時だけ一緒なんじゃなくて、そうじゃない時も一緒なんだってこと」に気付いた重要なコミュでした。【つなぐ・まごころ・みっつ】でも、【流れ星が消えるまでのジャーニー】でも、大まかに言えば内的要因によるメンバー間もしくは個人の葛藤です。

 【アンカーボルトソング】では対照的に、周囲の人々が抱える不安や指摘に対し、ユニットとして、さらに個人としてどう対応していくかという外的要因による悩みがかなり強調されています。今作中で最も重要な題目の"アルストロメリアが離れ離れになってしまう不安"は、終盤でこそ彼女達自身からも噴出しましたが、主なリソースはファン達のSNS投稿でした。

 そしてファンと同じように、甜花ちゃん達は他の2人のツイスタを見て、同じように悩まされるのです。ファンだけでなくユニットメンバーでさえも、"外から見たアルスト"の情報が頼りになっていました。思えば今作中では、メンバーが一緒にいる時間がほとんどありません。同じ屋根の下で暮らす大崎姉妹でさえも、お仕事の準備や宿題に追われて落ち着く暇がありませんでした。千雪さんのファンが「遠くなっちゃった」と呟いたように、3人それぞれも、互いに生じた距離感に悩んでしまいます。それも、問題の解決は自分たちだけが納得するやり方(【薄桃色】での解決方法)では足りず、外部へ発信し形として示す必要もあったのです。

 さらに言えば、アルストロメリアの永遠の課題でもある"変わること"についても、"内的"だけでなく"外的"な視点が必要でした。以前のシナリオでは、アルストロメリアの3人が"内的"に変わることで問題を解決しました。しかし今作では、"外的"な環境が変わっていく中での"アルストロメリアに要求される変化"によって解決しなければなりません。

 ソロ活動による周囲の変化、ファンが抱く期待の変化。アイドルとして順調に成長したことで新たに生じた外からの課題に合わせて"変わる"ことが必要だったのです。


 【アンカーボルトソング】は、これまでとは全く違う切り口で問題が提起され、その答えも数段難解にレベルアップされた、まさに"第2期のアルストロメリアシナリオ"だったのではないでしょうか。

 

 

時間経過が示す3人の成長

 第6話冒頭、ミニステージへの出演が決まった3人の『ハピリリ』のレッスン風景が描かれます。『ハピリリ』は2018年にリリースされたアルストロメリア1stシングルのカップリング曲であり、現実世界のライブでも多く披露されています。ゲーム内での時間はどれくらい経っているかわかりませんが、千雪さんが「これやった回数、何百回じゃきかないもの……!」と話しており、レッスンと本番を合わせての回数が相当なものになるほど経過していると伺えます。一度合わせただけでシャニPにもう十分と言わせるほど練度が高く、3人のパフォーマンスの成長ぶりが伝わってくるワンシーンでした。

 また、今作では3人それぞれのソロでの活動に焦点が当てられています。コミュ内でも新しいお仕事を次々と獲っているあたり、ユニットとしても、ソロとしても、知名度が相当上がっている様子が窺えます。G.R.A.D.がかなり大きなオーディション番組だったので、そこで優勝したことがお仕事獲得に繋がっているのでしょう。

 G.R.A.D.編を経て3人がアイドルとして躍進し、ひとりでのお仕事をこなせるようになっており、ここまでの時間経過と成長した様子をかなり実感できる素晴らしいシナリオだったと私は断言できます。

 

工事現場とシンクロするアルストロメリアのアイドル人生

 予告の時点から強調されていた点として、工事現場の様子を描写していることが挙げられます。これもやはり今までのコミュには無い本作の大きな特徴ですが、私はこの表現について、アルストロメリアがずっと抱えているテーマである"変わるもの"と"変わらないもの"のひとつの解になっているのではと感じました。書き下してみます。

 

 オープニングとエンディングの回想で、雨の中、工事現場のそばを移動する3人が描かれました。会話からしてこの時の3人はまだデビューして間もない頃だと思われます。慣れないヒールを履き、滑ったり、濡れたりしながら、警備員の指示に従って歩いて行きます。工事は途上段階で、周囲には殆ど人がいません。

 この工事現場は、"新人のアイドル"を表しているのではないでしょうか。未完で、荒削りで、雨を防ぐ屋根もなくて。失敗して躓くこともあります。涙に濡れることもあります。完成するまで、ずっとずっと工事が続くのです。認められるまで、アイドルは七転八倒し続けるのです。

 回想の狭間に、ライブ会場へ向かう現在の3人が描かれます。周囲をファンに囲まれ、余裕の表情で歓声に応える姿は、サポートSSRのイラスト通り輝きに満ち溢れたアルストロメリアと言えるでしょう。工事は終了し、綺麗なアーケードとショッピングモールが完成しています。バラバラに建っていたビルが屋根付きの通路で結ばれて、多くの人が利用する施設へと変わったのです。完成した街角は、まさに"成長したアイドル"、現在のアルストロメリアを指すのでしょう

 

 シナリオのタイトルにもあるアンカーボルトとは、構造物や機構が分離したり、浮遊したりすることを防ぐために埋め込まれるボルトのことです。この工事でも様々な部分で使われているかもしれません。それと同じように、『ソロでの活動が多くなったアルストロメリアの3人が離れてしまわないように』という願いを込めて、このタイトルが付けられたのだと想像できます。

 

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 たくさんの人、たくさんの歓声。離れ離れになるかもしれないという不安を共に乗り越え、多くのファンに迎え入れられた3人は、アルストロメリアの新しい1日目、新しいスライドの1ページを生み出したのです。 

 

 そして、エンディングの一番最後には未だ工事が続くビルが映されています。アルストロメリアの物語はこれで完成ではない、ということです。ずっと大きくなり続ける、ずっと成長し続ける……千雪さんがこっちに来た時、すなわちアイドルとしてデビューしたときから、これから先いつまでも、アイドル達が成長していくことを十分に示唆する演出なのではないでしょうか。

 

 

3人それぞれの視点から徹底考察

 

千雪さんとギャップ、ユニットとソロの間で揺れ動いて

 「お世辞じゃなくそう言っていただけたら」。

 ライブに来ないかと誘われた千雪さんはこう答え、この言葉を聞いたバンドマン達は「いいねぇ」と茶化しつつなおも勧誘の意思を伝えました。

 音楽番組のMCには「わりと言うじゃない?」「もっとおとなしいおねーさんみたいな感じかなって」「アルストロメリアちゃんの印象しかないから」と、ユニットでの活動とのギャップを指摘されています。それでもなお、「もっと出していいよ」「ソロでやるって、そういうことだから」と歓迎されています。

 しかしながら、この番組へのファンの反応は芳しくありません。『アルストロメリアから離れていってしまう』という危惧は、ソロ活動を取り巻く先述の登場人物達とは真逆の感情が込められています。ファンと仕事仲間との間には、千雪さんへの期待の仕方にかなりのギャップがあるのです。

 "ギャップ"。今作の千雪さんのテーマはこの言葉なのかもしれません。

 ファンが寄せる言葉に胸を痛めていた描写がかなり多かったのが千雪さんです。ソロのお仕事に「どういう私でいればいいのか、迷う時があった」とシャニPに相談したとき、”アルストロメリアでの桑山千雪”と”ソロ活動での桑山千雪”に揺れ動いていました。『アルストロメリアのことをいちばんに大事にしたい』という本心は、輝かしい今の自分の活動でさえ不安に感じてしまうほど。

 けれど3人での時間とスライドをきっかけに、ユニットとソロのどちらも大切にすることを選びました。それがやがて、"思い出"の千雪さんも、これからの千雪さんも、応援してもらえることに繋がるのです。

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第3話での番組MCの言葉。エンディングで胸を張ってギラつきを発揮出来たのも、彼のこの言葉に背中を押してもらえたからかもしれません。

 

 

甘奈ちゃんとG.R.A.D.、課題を乗り越えた先の物語

「宿題やってる暇なんてないよー……」

 デモ音源の聴き込み、台本の読み込み、インタビューの原稿チェック。それに加えて、化粧品のプロデュースプロジェクトの勉強に明け暮れる甘奈ちゃん。学校の宿題に手が回らず、夜更かしをする日々が続きます。一見するとネガティブなイメージが先行しますが、ここには3年間を経て成長した甘奈ちゃんの変化が見て取れます。

 

 ひとつ目は、『死ぬ気で頑張る』こと。

 G.R.A.D.編で明かされた"甘奈の嫌なところ"は、『器用貧乏であるが故に何かに全力で打ち込むことができず、越えられない壁に当たるような挑戦をずっと避けてきたこと』でした。甘奈ちゃんはG.R.A.D.優勝という証拠を以てこれを克服し、W.I.N.G.編からずっと抱えてきた課題を乗り越えたのでした。

 ↓参考

bota-ohagi.hatenablog.com

 

 その経験は今作で確実に活きています。未知の分野を貪欲に学び、挑戦し、他のお仕事も含めてがむしゃらに取り組んでいます。一度は案を取り下げられてしまったことで意義を見失いかけますが、甜花ちゃん・千雪さんとの会話やファンのスライドをきっかけに立ち直り、サポートSSRコミュ内で見事にやりたいことを成し遂げました。G.R.A.D.以前の甘奈ちゃんだったら"越えられない壁"だと認識して折れてしまっていたかもしれません。これまでの歩みと成長がたしかに感じられるコミュでした。

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初めての試みに臆すること無く誓った強い決意は、甘奈ちゃんの成長を大いに感じる瞬間でした。

 

 ふたつ目は『弱音を吐けるようになった』こと。

 ファン感謝祭の頃の甘奈ちゃんは、シャニPどころか甜花ちゃんや千雪さんにもほとんど悩みを打ち明けることができず、足を挫いてシャニPから促されるまで自発的に動くことができませんでした。G.R.A.D.編で「これ以上は踏み込まないでほしい」と予防線を張ったり、【薄桃色】で千雪さんに本音を言えなかったり……と何かと抱え込みがちです。

 しかしこれまでの多くの経験の中でそんな自分を受け入れて、甘奈ちゃんは少しずつ"声が出せる"ようになっていきました。イベントコミュでは甜花ちゃんに、サポートSSRコミュでは千雪さんに。第5話で「ごめんねっ ありがと、聞いてくれて」と甜花ちゃんに話す様子は、「悩んでるなんて、知られたくない」と怖がっていたG.R.A.D.の頃から随分と変わりました。不穏な間や演出は特に設けられず、すんなりと気持ちを吐露できるようになっている様子は、以前の躊躇いを克服した姿そのものだと感じられます。

 

 

甜花ちゃんとアルストロメリア、時系列で紐解く今作の本質

 【アンカーボルトソング】の主人公は甜花ちゃんと言っても過言ではないでしょう。第6話にて描写された、非常に珍しい彼女の胸中の本音は誰もが震えたに違いありません(クソデカ主語)
 3人の中で最も一人称視点の描写が多く、その思慮深さと聡明さが克明に表されていた甜花ちゃん。ここからはある程度時系列に沿って、甜花ちゃんの心情変化を追いつつシナリオ全体に触れていこうと思います。

 

第1話~第2話

 千雪さんの歌番組司会への抜擢、甘奈ちゃんの化粧品メーカーコラボ。ふたりの活躍する様子をツイスタでチェックする甜花ちゃん。そんな彼女にもラジオMCのお仕事があり、ディレクターに「甘奈ちゃんをゲストで呼べないか」と提案されます。
 本当はゲストに来てほしいけど、「たぶんすごく大事な仕事だから」と気遣って保留にする甜花ちゃん。自分も大変なのにとディレクターに謝られると、「甜花は、ダイジョブ……です、全然――!」「大変なの……千雪さんとなーちゃん、だから……」と気丈に振る舞います。お姉ちゃんらしい一面が垣間見えるとともに、やはり2人(+ディレクターさん)を気遣う優しさが伝わってくるシーンです。

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 その後、自身がバラエティ番組にレギュラー出演できることをシャニPから伝えられます。シャニPの「無理させるだけになるなら…」という危惧に対しては、千雪さんと甘奈ちゃんが大変ながらも楽しそうに仕事をしていることを挙げ、「(甜花も)やらなきゃ……」と呟きます。「綺麗だった」「まだ見たことない感じに」というセリフからは2人への憧れが読み取れ、『自分もそうなりたい』という強い気持ちが伝わってきます。今思うと、この時点から『2人が遠い存在になってほしくない』という焦りが少しだけあったのかもしれません。

 

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 また、甜花ちゃんはこのタイミングで、『なーちゃんにラジオのゲスト出演をしてほしい』と打診するつもりでした。ディレクターに「プロデューサーさんに聞いてみる」と言ったのに聞かなかったのは、この話を受けて『なーちゃんも自分と同じように頑張ってるから、迷惑をかけられない』『プロデューサーも忙しいのに、手間を取らせてしまうかもしれない』という感情が湧いたからだと考えました。というのも後者については、何かと鼻が良いシャニPは、『なんでもない』と答えれば必ず不審がることが目に見えているからです。問いただされても言わずに解散し、後々問題が起きれば、悩みを聞き出せなかったシャニPに非があることになってしまいます。だから甜花ちゃんは『なんでもない』ではなく「忘れちゃった」と答えたのだと思います。"忘れた"と言えばそれ以上深く言及されることは無いし、原因の元を自分自身に設定できるからです。甜花ちゃんの気配りと聡明さが滲み出ている瞬間だったのではないでしょうか。

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逡巡してから「忘れちゃった」と答える表情には、どこか寂しそうな雰囲気さえ感じられます。

 

第3話

 冒頭、甘奈ちゃんの仕事についての話をしている甜花ちゃん。頃合いを見計らい、目を泳がせつつ、なんとかラジオの招待をしようと試みましたが、明日の準備をすると言った甘奈ちゃんにそれ以上強く申し出ることができませんでした。

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言いかけた言葉は甘奈ちゃんに届かず、結局招待の話は出来ませんでした。

 ここでも甜花ちゃんはちょっぴり嘘をつき、「ラジオ、楽しかったよ」と言いかけた言葉の続きを偽ります。本当は呼びたいけれど、忙しそうな甘奈ちゃんを目の当たりにすると、やはり憚れるのでしょう。さりげなく本心を隠しつつ別の話題に移ろうとする様子は、やはり頭の回転の早さが窺えます。

 

 その後、先述したバラエティ番組の様子が描かれます。甜花ちゃんは非常に良い味を出しており、共演者との掛け合いも中々の出来です。W.I.N.G.の頃は引っ込み思案で、CDを宣伝することに緊張してしまったり、お芝居で上手く声を出せなかったりと、独りでお仕事をすることにかなり不安を抱いていた甜花ちゃんですが、初対面だったにもかかわらずしっかりとしたコミュニケーションを取って収録を成功させていました。甜花ちゃんの成長が良く表れており、しっかりお仕事をこなせるアイドルになっているんだという強さを感じさせます。

 第3話の終わり際、ツイスタをチェックしている最中にファンの嘆きを目撃してしまう甜花ちゃん。「……そ、そういう意見も、ある……!」と困惑しながらも言い聞かせる姿は、普段からネット慣れしている甜花ちゃんらしさが窺えるシーンです。

 このときに件のスライドを発見しますが、これについての言及は後ほど。

 

第4話

 ここからかなりシリアスな流れになってきます。
 宿題をやる暇が無いほど色んなものに追われている甘奈ちゃんに、ミルクティーを作って持っていく甜花ちゃん。部屋に入った途端、甘奈ちゃんの愚痴を聞いてしまい、言葉に詰まってしまいました。

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 この場面、甘奈ちゃんの態度の変わり様も中々に趣深いです。独りのときは焦りや苛立ちさえ感じていますが、甜花ちゃんに気付くなり彼女を労る姿勢を全面に出しています。本当に甜花ちゃん想いの優しい子です。

 そんな甘奈ちゃんの「かわいー甜花ちゃんをもっとみんなに見てもらわないとダメなんだから!」という言葉を受け取った甜花ちゃんは、直前まで渡そうとしていたミルクティーを自分のものだと偽ります。素直に嬉しいのと同時に『これ以上頑張れって言えない』『なーちゃんの好意を無下に出来ない』と思ったのではないでしょうか。

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かろうじて明るい口調で話したのち、部屋を出るなり寂しそうなな顔を浮かべる甜花ちゃん。

 せめぎ合う感情の中で部屋を後にする甜花ちゃん。真っ暗な画面の中、フーフーとミルクティーを冷ます甜花ちゃんの息と、ミルクティーを啜る音が響きます。寂しさ、もどかしさが痛いほど伝わってくるシーンです。


 もどかしさは焦りに変わり、思いが空回りし始めます。甘奈ちゃんと千雪さんに掛け合ってスケジュールの合間を縫い、集まる時間を作りましたが、甘奈ちゃんは打合せ準備で上の空、千雪さんは仕事の電話に追われ、ゆっくり腰を落ち着けて話をすることもできません。

 さらに甜花ちゃんは仕事の時間を間違えており、自ら用意した大事な時間を自らの手で壊してしまいます。【薄桃色】で機転を利かせて、トレーナーを会場に向かわせるよう手配していた甜花ちゃんとは大きな違いです。

 雨の中、工事現場のそばを走る甜花ちゃん。足を滑らせないのは成長したことを示唆しています。しかし、途中で解散してしまった集まりについて、「前とは……違うって感じ、だけ……残った……」と言及します。そして鳴り響く工事の音。

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3人の集まりについての呟きですが、工事現場の様子にもシンクロしているように思えます。


 工事現場、つまりアルストロメリアの3人は"変わって"はいませんでした。ただ前とは"違って"いるだけで、事態は好転していません。

 "change"と"differ"。どちらも自動詞ですが、後者には状態を単純に指し示すだけというニュアンスがあります。ひとりひとりソロのお仕事に打ち込めるようになるほどアイドルとして活動できるようになったけど、集まっても心がバラバラな3人は、アンカーボルトがまだしっかりと埋め込めていない状態です。だから、最初に工事現場に来たとき(アイドルになった直後)とは確かに違う("differ")けど、3人の現状と距離感は、本質的な解決("change")まで至っていません。甜花ちゃんの一言には、こんな意味が込められているのではないかと深読みしてしまいました。

 

第5話

 バラエティ番組収録後に、駆け出しモデルから再びツイスタ用の写真撮影を頼まれます。『アルストロメリア以外の人が映っているとファンの心がざわついてしまう』という千雪さんの危惧が頭をよぎり、『匂わせ』をすべきでは無いことも理解していますが、そのまま応じてしまいます。断ろうと思えば断れたのでしょうが、『番組を成功させるチームの一員』である以上雰囲気を壊すことは出来ません。甜花ちゃん自身は「流されて」と言っていますが、個人的には、お仕事として関わっていくうえでのプロの精神が根底にあったのではと思います。

 しかしながら、その直後の甘奈ちゃんとの会話のシーン。甘奈ちゃんの『頑張らなくちゃ甜花ちゃんたちみたいに輝けない』と言われ、原因がそのツーショットにあったと知ったとき、甜花ちゃんは「……やめてもいい、……ツイスタ……」とさえ話してしまいます。

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 それはファンに向けて、甘奈ちゃんに向けての気遣いでした。大事なものを守るためなら、自分が失うものがあっても構わない。優しいが故の自己犠牲に近い考え方は、【薄桃色】のゴリラの件を彷彿とさせます。

 その後、スライドを見たふたりはミルクティーを温め直して話し合います。気持ちの乖離の理由のひとつに、『お互いがお互いのことを遠く感じてしまっている』とわかったからです。『甜花(甘奈)はなーちゃん(甜花ちゃん)みたいにすごくない』という考え方は、アルストロメリアという輪から自分が外れてしまう錯覚に陥ってしまいます。"3人のアルストロメリア"を、"ファンが大好きなアルストロメリア"を守るために、甜花ちゃんは「なーちゃんのこと……すごいって……思ってるよ……」と伝えたのではないでしょうか。『甜花がダメ』と孤立するのではなく、『なーちゃんみたいになりたい』と伝えて寄り添うこと。それが甜花ちゃんにとっての"変わったこと"なのかもしれません。

 

第6話

「ずっと、このまま……いるなら……」
「ずっとこのままじゃ……いれない……」


 予告の時点で明かされていた甜花ちゃんの特徴的な呟き。正直、非常に抽象的なため解釈が難しいのですが、自分なりの考えを書いてみます。
 「いろんなものが変わっていくから」という千雪さんの言葉と、スライドの中の"思い出"のアルストロメリア。日々変わり続ける日常の中で切り取られた"思い出"は、その時点で保存され、永遠に変わることがありません。だから今のアルストロメリアは、"思い出"に負けないために変わり続ける必要があるのです。

 甘奈ちゃんと甜花ちゃんの「このまま」という言葉は、ある一瞬でのアルストロメリアを指すのではないでしょうか。それは工事現場のそばを歩いている第6話時点の3人のことであり、スライドの中のアルストロメリアのことでもあるという仮説です。

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 「ずっとこのままでいたい」という甘奈ちゃんの言葉は、ファン感謝祭の「いつまでも今が続けばいいな」というセリフと若干似てはいますが、心境はかなり違ったものになっています。今の甘奈ちゃんは、未来を怖れることなく進んでいこうという意志があります。"思い出"の中のアルストロメリアが続いてほしい、だから変わっていかなくちゃという気持ちがあるように思えます。

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 先に述べた甜花ちゃんの言葉は、『みんなが大好きなアルストロメリアを守り続けるためには、"思い出"の中に留まっているだけではいられない』という意味が込められているのではないでしょうか。現在のアルストロメリアを見て寂しいと思っている人たちに、以前と同じような幸せなアルストロメリアを見せるためには、周囲の環境に適うように"変わって"、新しい姿を見せる必要があるのです。

 

 そしてこの言葉は、甘奈ちゃんと千雪さんに向けた甜花ちゃんの本音でもありました。

 

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「変わらないでって……遠くに行かないで……って………」

「今、思ってる人が……いるから……」
「甜花が、そう思ってる……」


 ファンと同様に、いやファン以上に、甜花ちゃん自身もふたりに対して"離れてしまうことへの恐れ"を抱いていたのです。

 か細く震える声が寂しさを物語っており、痛々しいほどの感情が伝わってきます。せっかくの集まりを仕事のために解散しなければならなかった雨の日に無言で走っていたときも、甘奈ちゃんにミルクティーを渡せずに自分で啜っていたときも、きっと同じ寂しさを抱いていたことでしょう。一緒に居たい気持ちを伝えられず、輝き続けるふたりをツイスタで眺めてもどかしくなっていたのでしょう。

 未だかつて、甜花ちゃんがここまで本心を露わにしたことがあったでしょうか。ファン感謝祭編や【薄桃色】ではみんなをサポートする側に回っていて、弱音を見せることがほとんど無かった甜花ちゃんが、です。これまでの有能すぎる行動の裏で、実はずっとこのような寂しさや不安を抱えていたのかもしれないと考えると、より一層甜花ちゃんの"強さ"が分かる気がします。

 これらの言葉は内心のみで、口には出していないようです。すんでのところで踏み留まったのは、ふたりを心配させたくないという甜花ちゃんの最後の意地だったのかもしれません。それだけ甜花ちゃんはふたりのことが大好きなんだろうなぁ、とひしひしと感じるシーンでした。

 

※私の本音を少しだけ話させてください。ここのシーンはほんとうにむりになりました。まじでむりです。弱々しく感情を吐露する甜花ちゃんを見るのががあまりにもしんどくて号泣しました。ずるいです。死ぬに決まってる。この演出考えたやつ許さない。ありがとう。きっと甜花ちゃんはこれまでもずっと不安や焦燥を感じながら必死に頑張ってきたんだろうなということを想像するとホントしんどくて、だからこそ頑張っている様子と成果が嬉しくて、ずっとずっと応援したいって思いました。ありがとう。

 

Extra:シャニPとアルストロメリア

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これまで通り、3人で一緒に輝いてほしい

 

 千雪さんとの会話で発したシャニPの言葉は、アルストロメリアの現状に対してまさに誰もが抱いていた本質的感情でした。この時点でシャニPのアルストロメリアに対する理解度の高さが窺えますが、その後すぐに3人一緒でのミニステージとレッスンを設定します。「それぞれの仕事に向き合ってほしかったから一度は断ろうとした」という点から、3人のこの先(ユニットと、アイドルひとりひとりとしての活躍)を見据えたプロデュースを行っていること、負担や体調への気遣いが窺えます。しかしこのタイミングでの3人一緒のお仕事は、アルストロメリアがお互いに向き合い、ファンにも向き合うためにも必要な時間でした。多少無理なスケジュールでも取るべきだろうと決断したシャニPの判断は大正解と言えます。

 そして、先述した『ハピリリ』の合わせ練習で、シャニPは3人が一回合わせただけで「もう十分だ」と褒め、「今しかできないこと やってほしい」とオフの時間を設けました。ずっと離れ離れだった3人が久々に時間をとって遊ぶことができ、3人一緒にいることの素晴らしさと大切さを再確認でき、ファンに"匂わせ"をすることができました。結果的に今作での好転の機となったこの一幕ですが、シャニPは『ハピリリ』の合わせ練習が一発で終わることを最初から分かっていたのではないでしょうか?今の彼女たちなら何百回も踊ったダンスを合わせるくらい容易いことを、プロデューサーの彼なら承知していてもおかしくありません。そして、第4話で甜花ちゃんとの(仕事の)待ち合わせによって、3人の貴重な集まりの時間を壊してしまったことを甜花ちゃんの様子から悟って知っていたのでしょう。仮に、初めから合わせ練習の時間を最低限に取って残りをオフとする設定をしたら、何かと忙しい3人はそれぞれの仕事のための予習やレッスンを自主的にしてしまうかもしれません。もう一度、3人で向き合う時間をちゃんと設けるために、敢えてオフの時間を伝えずに召集して、「3人のやりたいこと」を自然と促したのではないでしょうか?

 

 今作でのシャニPの登場頻度はこれまでのシナリオコミュと比較しても少ない方に入ります。アルストロメリアを存分に楽しめることができて満足度が高い上に、最少限の働きで最大限の働きを見せたシャニPの有能さが際立つ素晴らしいコミュだったと思います。

 

 

演出面から見る【アンカーボルトソング】の裏側

ファン制作のスライドはシャニマスユーザーへ向けて作られた?

 甜花ちゃんがふと見つけた、"アルストロメリアの思い出"。「俺の好きだったアルストロメリア」「メモリー」という文言が添えられていたこのスライドでは、これまでのアルストロメリアの活動が回想のように流れていきました。3年間の歴史の中で紡がれた数々の感動の物語を想起させるものも多く、今作の涙腺破壊ポイントのひとつだったと思います。

 スライドの中身はシャニマス時空内でのアルストロメリアのお仕事にまつわるものと考えられます。しかしながら、そのうち幾つかは明らかにファンには知り得ない情報が混ざっています。

 確認できた背景は以下の通り。

・カフェ
・夏祭り
・教会
・河川敷
・バス内

 強いて言えばバス内なら【完録、クエストロメリア!】のロケ中にカメラマンが回していた可能性はあります。しかしそれ以外ではこれまでのシャニマスで描かれていたお仕事に思い当たる節が無く、どの場面を指しているのか照合することが困難です(あるいは私がパッと思いついていないだけです、分かる方はぜひお知らせ下さい)。特に河川敷は明らかに【薄桃色にこんがらがって】を指す背景であり、ファンの目に触れることは絶対に無かったはずの景色です。カフェの背景もファン感謝祭編の冒頭を指しているとしたら、また夏祭りは【つなぐ・まごころ・みっつ】を指しているとしたら、やはりテレビやSNSでは映るはずのない景色でしょう。教会……どこ……???

 それでは、これらの背景は何故スライドに使用されたのでしょうか?コミュの進行上、このスライドはアルスト3人のお仕事の様子を表すものという体の存在です。同時に、画面の外の私達シャニマスユーザーにも、「あ、これはアルストロメリアの過去の回想だな」とセリフ無しでも理解できるようなものでなければなりません。しかし、私達がこれまでシャニマスで見てきた景色は、アイドルの誰か、もしくはシャニPの視界を通じて得られた情報であり、そのほとんどがお仕事では無いときの時間です。シャニマスユーザーの"思い出"は、ゲーム内のファンと大きく乖離しています。スライドは、アルストロメリアの"思い出"を作中で表現するため」「アルストロメリアの歩みをシャニマスのユーザーに意識させるため」の2点を両立させる演出だったのではないでしょうか。ゲーム内の人間、ゲーム外の人間、双方が即座に"思い出"を認識できるような素晴らしい演出だったと思います。

 

(追記)教会のシーンは【完録、クエストロメリア!】のエンディングでした。

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Auto進行・イヤホン推奨!聴かなければわからない"音"の演出

 3年目(ノクチル加入時期)以降随所に見られるようになったSE・BGM・ボイスの演出。ボイスについては、テキストが無い時だけでなく、誰かのセリフに被せて違うアイドルが発言することがあったり、意図的にテキストを載せなかったり……と、多岐にわたる演出が展開されるようになってきています。また、BGMに楽曲を使用する傾向が強くなってきており、SEの多様さも最近になってかなり加速しています。特に今作ではその演出が心情表現に直結するほど意味のあるものになっており、まだ読んでいない人には飛ばさずにAUTOでイヤホンで聴いてほしいほどです。

 ひとつ目は、甜花ちゃんとミルクティーに関するもの。先述したように、この演出は甜花ちゃんの密かな寂しさを表現したものです。本来甘奈ちゃんに渡すはずだったミルクティーを、部屋に戻って独りで飲む甜花ちゃん。画面は真っ暗でテキストも無く、セリフもありません。音を聴いていなければ全く気付かないこの演出は、直接描写してしまうと表情がはっきりわかってしまい、情景に深みが出ないためではないかと考えました。視覚的情報を与えず、息と音だけで状況を読み手に想像させ、その寂しさが印象深いものになるように仕向けているのかもしれません。

 ふたつ目は、第6話のシャイノグラフィBGMです。離れ離れになりかけたアルストロメリアが元に戻るため、シャニPの提案で『今しかできないこと』に出掛けた3人の描写の際に突然流れ出しました。

 個人的な見解ですが、この曲はシャイニーカラーズのこれまでの軌跡とこれからの期待をGradation(移り変わり)というテーマに沿って描いているものだと考えています。ここまでのアルストロメリアの活動で積み上げてきたもの(スライドの内容、ソロ活動)を受けて、これから新しい未来を作っていこうとする3人の感情にあまりにもピッタリ当てはまるのではないかと感じてしまいました。特に1番の『たぶん一緒に居るだけじゃダメなんだ』という歌詞が【アンカーボルトソング】の展開そのものを表しているように感じてやまないのです。選曲とタイミング、全てが噛み合っている素晴らしい演出だったと思います。

 

 1年ほど前に、Twitterで「フルボイスのゲームシナリオ、オートだと遅いからタップして飛ばしながら読むようになった」という書き込みを見たことがあります(シャニマスじゃなさそうだった)。現代のソーシャルゲーマーの時間不足に反比例して得るべきテキスト情報が膨大であるために、それを知るだけなら飛ばし飛ばしでも文字を認識できれば良いという切実な訴えです。自分もこの意見にはやや肯定派で、実際疲れている時はボイスの途中で切ることも少なからずありました。

 しかしシャニマスに関しては、テキストのような視覚的情報だけでなく、聴覚的情報も含めてひとつの作品なんだなということを強く実感します。時間はかかるけれど、文も声も音も全部ひっくるめて芸術なんだという、ゲーム制作陣の意地なのではと感じるほどです。だからこそ、シャニマスのコミュはこんなにも素晴らしいんだ、と自分は声を大にして伝えたいです。

 

 

文学的構成が魅せる芸術性

 今作の特徴のひとつに、プロローグとエンディングに同じ内容の描写が使われていることが挙げられます。これは小説でよく使われる技法で、全く同じ文章で違う意味を表したり、終わり方に余韻を持たせたりするために用いられることがあります。

 プロローグでは回想と現在の対比だけでしたが、エンディングでは未だ建設中のビルの様子が追加されています。それまでの対比でアルストロメリアが過去も現在も大切にしていることを再認識させたうえで、これからの未来への希望も描いているのです。工事現場とアイドルという印象的なシーンがさらに際立っており、読み手の記憶に残りやすい表現となっています。

 その後、甜花ちゃんがビルのパシャリと写真を撮ってコミュが終了します。写真の中の"思い出"は永遠ですが、再び足を運んだ際にはまた違った姿で工事を続けていることでしょう。成長していく途中の、その時点までの"思い出"を切り取る……アルストロメリアの成長を描いたコミュの終わり方としてこれ以上無いほど完璧で美しいエンディングです。

 ホーム画面でのイベントバナーも、ファンが撮影した様子を表現するように【ever-】がスマホ画面に収まっています。【アンカーボルトソング】自体が既に"思い出"になり、かつ、『伸びるビル』のようにアルストロメリアの物語がこれからもずっと続いていくことを示唆しているのではないでしょうか。

 

 コミュ構成でも唸らせてくるシャニマスは、一種の文学作品とみなしても良いほど良質で素晴らしい物語を提供してくれます。それも高山Pをはじめとするゲーム製作陣と天才ライター陣の尽力のおかげです。どうかこの良さが今後も続いてくれることを願うばかりです。

 

 

おわりに

 ここまで読んで下さりありがとうございました。

 あくまで私の考えなので見当外れなことを言っている可能性もありますが、こんなに読書感想文を書いちゃうくらいには刺さってしまいました。もしご意見等あれば交換したいので、ぜひコメントやTwitterで言及していただければ。

 3rdライブツアー最終日、シャイニーカラーズの、アルストロメリアの集大成を目撃しました。その翌日にこんなコミュを観てしまったら、もうおしまい人間です。

 

 『ダブル・イフェクト』や『Anniversary』の歌詞を想起させる言葉も散りばめられていましたし……………

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 福岡初日の芝崎典子さんの挨拶はもはやこのコミュのことを指しているようなものでしたし…………

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【つなぐ・まごころ・みっつ】第5話より

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【薄桃色にこんがらがって】プロローグより

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【アンカーボルトソング】第5話より

”3人でアルストロメリア

 離れててもつながってる。一番大事なものはきっと変わらない。

 これまでの歩みも、これからの未来も、決して散ることのないメモリーなんです。

 そんなアルストロメリアの物語を、これからもずっと追い続けていきたい。そう強く思える素晴らしいイベントシナリオでした。

 

 ありがとう、アルストロメリア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

p.s. 【ever-】第2コミュ『アマイ永遠』初見時↓

 

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無理でしょあんなの。

 

ボタ餅

新説・黒埼ちとせの短命の理由を探る

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※※※注意※※※
 筆者はデレステの限定SSR[ひとり、時は過ぎて]白雪千夜、および[千年の誓約]黒埼ちとせの両カードを所持しておらず、そのカード内のコミュを観ておりません。ここでの考察に重大な矛盾が生じていた場合はその旨をお知らせいただけると幸いです。なお、それにより不快感を与えてしまった場合の責任は負えませんのでご了承ください。

 

 

 本考察はこちらの記事の続きの形となります。今回のはそんなに大した追記ではないのでラフな感じで見ていただければと思います。

bota-ohagi.hatenablog.com

 


 2ヶ月ほど前にふと天啓を授かって(?)頭の中に思い浮かんだことがあったので、整理しました。

 先に挙げた考察記事で、私はちとせちゃんが高校を休学した理由を病気と挙げていました。しかし具体的な内容はその時点では考えられず、有耶無耶にしたままでした。今回はその病気について、そしてちとせちゃんが「長くないと思うの」と言った根拠について考えてみます。

 

 


 単刀直入に話すと、ちとせちゃんが病弱で短命と悟っていた理由は『血が足りないから』だと考えています。それも、貧血気味という意味ではなく、ちとせちゃんは生まれつき血を造り出す機能に障害を持っているのではないでしょうか

 

 細胞はひとつひとつが生きており、新しく生まれる細胞、老いていく細胞、死んでいく細胞があります。ヒトの身体は数十兆個の細胞で出来ていますが、毎日数多くの細胞が生まれ、同時に死に、どんどん入れ替わることで生命の機能を維持しています。死んだ細胞は老廃物としてさまざまな形で身体から排出されていくわけです。動物が老衰で死ぬのは、代謝や細胞の更新が老化によって衰え、生命維持が出来なくなるからです。

 ヒトの血液は約120日で全て入れ替わると言われています。最も大きく寄与しているのは赤血球の存在です。赤血球をはじめとする血球たちは、骨髄の造血幹細胞で造られ、役目を全うし、やがて死滅して汗や尿として体外へ排出されます。

 

 そこで考えたのが、先に述べた障害です。仮に、ホルモンや組織自体に問題があり、ちとせちゃんの身体の血を造るスピードが遅いとしたら?排出スピードは通常の人間と変わらないため、血液の生産・排出の釣り合いが取れなくなってしまいます。通常ならばなんらかの治療か、緊急時には輸血をすれば足りない分は補えるはず。

 しかしここで、「もしちとせちゃんがO型のRh nullという"黄金の血"だったら」という空想を当てはめてみる(先述の考察記事参照)と、事態は急転直下してしまいます。

 世界でも数人しかいないとされる希少な血液型であり、輸血の機会は極々限られてしまいます。実質無いに等しいのです。外からの供給が出来ない以上、ちとせちゃんは常に「血が足りない」状態に陥ります。血液の循環は全身の機能に大きく関わるため、血液の不足は病弱な体質にも繋がります。そして、血が減り続けて生命を維持する分の充分な量を確保できなくなり、やがて死に至るのではないか、と。
 だからちとせちゃんは、自分が長く無いことを悟っており、短命と言われていたのではないでしょうか。

 

 

 そして同時に、その運命は少しずつ変わり始めているものだと考えられます。千夜ちゃんの存在です。

 私は、『千夜ちゃんも同じ血液型を持っている』という考察(先述の考察記事参照)をしていました。千夜ちゃんがちとせちゃんのそばにいることで、緊急時に輸血することができ、突発的な落命はまず免れることができます。
 また、ちとせちゃんはアイドルとして活動するために、それまでの生活習慣を大きく変えたと考えられます。「以前より遠くまで走れるようになった」と発言していることからも体力の向上が見受けられ、千夜ちゃんによる食事の栄養バランスも以前に増して強化されていることでしょう。少しずつですが、ちとせちゃんの体質が良くなっており、彼女自身の虚弱体質が改善されている可能性も考えられるのです。

 


 ちとせちゃんも、いっぱいご飯を食べていっぱい笑っていて欲しいですからね。

 

 今回の考察はここで終わり。自分なりの答えを整理できてすっきりしました。


 この考察をもとにちと千夜の特大感情怪文書を書きました。もしよかったら、ぜひ。

www.pixiv.net

G.R.A.D.編で泣き崩れたお話(甘奈ちゃん編)

これが、”大崎甘奈の答え”

 

 

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※注意!

この記事はG.R.A.D.のネタバレを大いに含みます。視聴済みの方推奨です。

前回の甜花ちゃん編の続きにあたります。もしよろしければそちらから。

bota-ohagi.hatenablog.com

 

 

 

 

目次

1. はじめに

2. 本コミュのずるいところ

3. 明かされた本質と過去の行動の答え合わせ

4. 「知られたくない」を踏み抜いたプロデューサーの英断

5. 初恋の思い出を告白した真意とは?

6. シャニマスが見せてくれる極上のエンターテインメント

7. あとがき

 

 

 

 

1. はじめに

 

「甘奈ちゃん、今の部分なんだけどね アルストロメリアにいる時とは違う表情を見せてほしいの」

 

 開幕のトレーナーの一言で察する激重シナリオ。初手から全開でしんどくなる甘奈ちゃん編は、私がG.R.A.D.編でいちばん泣くことになった感動の物語でした。
 私自身、甜花ちゃん編よりも号泣するとは思ってもいなくて、コミュのしんどさと最後に泣きすぎたのとで体調がマッハで悪くなるレベルでした。シャニマスは天才です。ライターさんは天才です。本当に天才。ノーベル文学賞受賞してほしいほんとに。
 そんな甘奈ちゃん編の感想と考察(になってるかわからない)をただ駄弁ります。

 


2. 本コミュのずるいところ


●そもそもG.R.A.D.編のコンセプトが大崎姉妹にドストレートに刺さってしまう
 G.R.A.D.編はアイドルひとりひとりにフィーチャーされているお話です。W.I.N.G.編は駆け出しアイドルが輝き出すまでの過程、感謝祭編ではその成長を踏まえたうえでユニットとしての成長を描いていましたが、3年目のこのタイミングで再び独りきりで大舞台に臨むことになったわけです。
 大崎姉妹は(ノクチルを除いて)唯一アイドルになる前から関わりがあり(家族だから"関わりがあり"とかいう一言で片付けられないですが)、W.I.N.G.でも感謝祭でもシナリオイベントでも随所に互いを意識する場面が描かれてきました。さまざまな試練を乗り越えて良いも悪いも経験したうえで特大の壁にぶち当たる今回のストーリーは、その2年間の歩みと成長、葛藤が試される大一番だったのです。

 

●重過ぎるストーリーと劇的な成長
 始まる前から分かってはいたのですが、上記のように甘奈ちゃんのストーリーは相当ヤバイシナリオになることは目に見えていました。
 とはいえまさかプロローグからいきなり突いてくるとは思わず、シーズン1でもプロデューサーに悩みを言えなくてさらに悪い方向へ。
 シーズン2では有名ファッションブランドのモデルのオファーという、甘奈ちゃんにぴったりの素敵な仕事が舞い込みます。それにもかかわらず、

「(……甘奈、ちゃんと喜べてたかな)」

と本心は嬉しさより苦悩が占めており、さらには、

「……甘奈ってお洋服のこと、得意分野だったんだ」

と自分の強みさえ見失っているという状況。直前の、プロデューサーへの「めーっちゃ素敵なお仕事だよ!取ってきてくれてありがとう」「甘奈、しっかりお勉強します!」という明るそうな声色との乖離が激しすぎることが、事態の深刻さをより引き立てています(この場面観てるときは頭狂いそうになって抱え転げてました。ひたすらに心がしんどい)
 曇る甘奈ちゃんの笑顔。その救いの無さに胃を内側から掻き毟られるような苦しささえ感じられ、あまつさえその苦しみはシーズン3まで及びます。「これ……本当にどうなっちゃうんだろう」と物凄く不安になり、コミュを読み進めるのが怖くなるほど。


 しかし、プロデューサーが救いの手を差し伸べたことで状況が好転。甘奈ちゃんは本当の本当に本気で"今を楽しむ"ことが出来るようになり、悩みを克服しました。
 本戦直前のコミュ。甘奈ちゃんの心境の変化は著しく、心から笑顔で明るく話せるようになった彼女の姿はとても輝いて見えました。背後で流れる音楽はここでしか聴けないもので、かつてない緊張感と壮大さを演出し、ラストバトルを漂わせる素晴らしいもの。過去一で重かった経験を乗り越えて、2年間辿り着けなかった"大崎甘奈の答え"を掴もうとしている甘奈ちゃん。背景と音楽と、甘奈ちゃんの力強い決意に、涙が止まらなくなりました。
 これは完全に個人の感想になってしまうのですが、私は歌・曲問わず音楽がとても好きなので(自作のプレイリスト作って聴くだけで泣くくらい弱い)、BGMが強いともう涙腺がダメになります。そのエモいBGMの中、見てて気が狂いそうになるほど辛かった前半コミュを乗り越えて、笑顔を取り戻した甘奈ちゃんの声を聴いて、2年間の歩みが走馬灯のように脳裏を駆け巡って………気付けば、甜花ちゃんのとき以上に泣き伏してしまったのです。

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 辛かった分だけ、最後の成長が光る。その劇的なサクセスストーリーは、ずるいの一言に尽きます。シャニマスしか勝たん。

 

●過去のお話を全部持ってくる
 プロローグでは、W.I.N.G.編、感謝祭編、『薄桃色にこんがらがって』の印象的なシーンが突然回想として流れます。そのどれも、

「甜花ちゃんや千雪さんは成長して変わっているのに、自分は変われていない」
「今が楽しければ良い、今の幸せが続けば良い。変わることは望んでいない」
「だけど変わらないと、置いていかれてしまう」
というような、"今"と"未来"に関する甘奈ちゃんの葛藤を描いていることが共通しています。
 ここまでの歩み、特に『薄桃色』で色濃く見える甘奈ちゃんの心理は、「自分のせいでアルストロメリアが無くなってしまうことをひどく恐れている」ということだと私は考えていました。

 甜花ちゃんと千雪さんとずっと一緒に居たい。今が平和だから、何かを無理に変えようとせずに今のままを維持したい。だけど、ふたりと一緒にいるためには自分を変えていかなくちゃいけない。そうしないと、ふたりに置いていかれるし、自分が遅れていることでアルストロメリアが瓦解してしまう。

 そんな不安と焦りを、甘奈ちゃんは2年間ずっと抱き続けてきました。
 ここで個人シナリオだけでなくわざわざ『薄桃色』の内容まで引っ張ってくるということは、このG.R.A.D.編が単一のお話というわけではなく、甘奈ちゃんが2年間で経験したもの全て(ただしSSRエピソードは番外編的な扱い?)の決算にあたるのだということを示しているのではないでしょうか。それはつまり、甘奈ちゃんがずっと抱き続けてきた”変われない” ”変わらなきゃ”という葛藤に終止符を打つラストバトルにあたるのかもしれないのです。

 

 

3. 明かされた本質と過去の行動の答え合わせ

 

 シーズン1から3にかけて、甘奈ちゃんの心内が徐々に開示されていきます。

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「……いつも通り。いつも通り……悩んでるなんて、知られたくない……」
「だって、甘奈だけずっと、おんなじところで止まってる」


 シーズン1の序盤で重苦しい甘奈ちゃんの心情が描かれますがこのセリフ、よくよく考えると過去の行動の多くに当てはまってしまいます
 甘奈ちゃんは悩みをなかなか打ち明けない子です。W.I.N.G.編で甜花ちゃんが頑張っていることで自分の至らなさを感じつつ、プロデューサーに言えなかったこと。感謝祭編で"ハッピーエンド"が引っかかることを甜花ちゃんと千雪さんに言えなかったこと、自分だけ変われていないと自覚して苦しんだこと。そしてそのいずれも、異変を誰かに気付かれると咄嗟に隠してしまうことが共通しています。

 隠して、誤魔化して、気付いたときには自力で修正が出来ない状態に陥ってしまう。そして甘奈ちゃんは、どうにも出来ないことに申し訳なさを感じ、自責の念に駆られてしまうのでした。
 確かに今振り返ってみれば、甘奈ちゃんは様々な課題にぶつかったとき、プロデューサーや甜花ちゃん、千雪さんと力を合わせて解決することが出来ていました。その度に新しい解決法を知り、成長していったのは間違いありません。
 しかしながら、甘奈ちゃんのこの行動心理に対する答えは有耶無耶にされ続けてきました。「なぜ甘奈ちゃんの自己肯定感が低く、変化を恐れているのか」という問いへの解は憶測の域を出ず、私自身も考えようにもなかなか考えがまとまりませんでした。


 以前、甘奈ちゃんについて私は次のような考察をしていました。
「すごく優しい子で、周囲への気配りが細やかに出来る子。相手を想うあまり自分のせいで不幸にさせてしまったら居た堪れない気持ちになる。相手の悲しみまで背負ってしまうから肯定感が低く、自分の悩みを話すことで迷惑をかけてしまうから言えずに溜め込んでしまう」
 その考えは、ある意味では正解で、ある意味では大間違いだったのです。理由は後ほど。

 

 

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アルストロメリアじゃない甘奈なんて、わからないのに」
「できてるみたいに、進んでいっちゃう……」
 シーズン2コミュの言葉からは、周りに求められる水準をこなせても自分の評価が伴っていないことが伝わってきます。そのうえ、アルストロメリアじゃない"大崎甘奈"の価値がわからないと言う彼女にとっては、「自分は甜花ちゃんと千雪さんがいるから一緒に輝けるだけで、自分独りだけでは何も無い」とさえ考えてしまっているのかもしれないのです。
 予選終了直後の「……甘奈、勝てちゃったんだ……」という純粋に喜べていないセリフからも、"周囲からの評価は高いのにその理由がわからない""自分を肯定できる材料すらわからず自信が持てない"という点で先述した内容に合致します。自己肯定感の低さの原因は、シーズン3・4で語られた"甘奈の嫌なところ"にありました。

 

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 甘奈ちゃんが"嫌なところ"として挙げた彼女の本心は次のようにまとめられます。


出来ていないのに出来るフリをして、周囲の人の期待に応えてきた。本人はそれを「嘘をついてきた」と罪悪感を覚えている。


自分からアイドルをやると言い出したのにそれは甜花ちゃんのためでもあって、独りでお仕事をする覚悟が無い。だから今、アルストロメリアじゃない甘奈を求められていることに辛くなっている。


"器用貧乏"で、ちょっと頑張れば出来る範囲で立ち止まってばかりいた。死ぬ気で頑張って出来なかったときが怖くて、そういうことをやりたくなくて避けてきた。

 

 彼女の本質を、過去の事柄と照らし合わせて考えてみます。
 まずは、③で挙げた"器用貧乏"という側面について。感謝祭編での甘奈ちゃんの「楽しい今が続けば良い」「これ以上のことは望んでいない」という心情は、"少し頑張れば出来てしまうから、その状態を維持できれば良い"、"少し背伸びして失敗してしまったら甜花ちゃんたちに失望されてしまうかもしれない、だから変わる(次のステップへ進む)ことが怖い"という本音があったのではないでしょうか。
 後者に関しては①にも関連しています。甘奈ちゃんはこれまで周囲の期待に応え続けてきていて、そのような描写はG.R.A.D.編でもシーズン1で登場しています。"嫌われたくない""がっかりされたくない""しっかり者でいたい"、そんな危惧を、甘奈ちゃんはずっと抱えていたのではないでしょうか。
 先程、私は自分のかつての考察が合っていて大間違いであると話しました。「優しい子で、周囲への気配りが細やかに出来る子」という解釈は、まさしく周囲の人目線の甘奈ちゃんへのイメージなのです。「甘奈ちゃんが努力して得たイメージ」を持っている点では合っているのですが、甘奈ちゃんの本質を捉えられていないために間違いでもあるのです。結局のところ、『薄桃色』で甜花ちゃんについて考えを改めたように、甘奈ちゃんも本質を理解出来ていなかったのでした。

 

↓『薄桃色にこんがらがって』のときの駄文

bota-ohagi.hatenablog.com


 しかしながら、甘奈ちゃんのその振る舞いは、彼女の最大の長所でもあります。甘奈ちゃんは自分のために行動していたことを"悪"だと決め付けていますが、それは甘奈ちゃんが優しい人で、誰かを思いやることが出来る素敵な子だという証拠なのです。本当に優しい子じゃなかったら損得考えずに他人のために行動することなんて出来ないし、本当に真面目な子じゃなかったら周囲に求められる"甘奈"を維持し続けることなんて出来ません。
 そんな甘奈ちゃんの性格を形成した要因は間違いなく甜花ちゃんの存在でしょう。プロデューサーがシーズン3で話した「失敗したって、ずるくたって、嫌だなって思うんじゃなくて、支えたいと思う人がいる」という言葉、もちろんプロデューサーのことでもあるのですが、それを幼少期からずっと、図らずもその役割を担ってきたのが甜花ちゃんです。たくさん気配りをしてくれる甘奈ちゃんに感謝しつつ、その気配りを享受して、どんな甘奈ちゃんも受け入れて寄り添ってあげる。それはきっと本人も無意識だったのでしょう。

 甘奈ちゃんは、甜花ちゃんが自身の最大の理解者であるがゆえに、甜花ちゃんのことが大好きだからずっと一緒にいたいと思っていました。そして同時に、嫌われたくない、嫌な甘奈を見せたくない……そんな想いを秘め続け、気付けば無意識にそのような行動(周囲への気配り、周囲から求められる"甘奈"になる努力)が取れるようになっていたのです。良くも、悪くも。

 甜花ちゃんや周囲の人へ自然ととっていた受け身の姿勢、それはここまでの17年間の生活で染み付いた行動基準です。しかしそれは決して否定してはいけないのです。それが甘奈ちゃんの良さだからです。だから、「それを"悪"と捉えてしまう壁」を乗り越えることが、甘奈ちゃんにとっての試練だったのではないでしょうか。


 ②について考えてみます。感謝祭編や『薄桃色』での甘奈ちゃんは、「自分のせいでアルストロメリアが無くなってしまう、もしくは今までのようにいられなくなってしまう」ことを恐れているように私は感じました。その主な理由が、「甜花ちゃんや千雪さんは変わっていってるのに、自分はいつまでも変われないから」というものでした。

 「置いていかれる」「負けるのが怖い」という度々登場した"怖い"感情は、前述した①の「周囲を失望させてしまうかもしれない」、③にある「出来ないかもしれない」という心情に通じるものがあります。それでは、"アルストロメリアじゃない甘奈"の自信が持てなくなったのは何故でしょうか。
 思うに、甜花ちゃんと共通して、「自分より他人に意識が集中していたから」なのではないか、と私は考えました。周囲の評価で自分がちゃんと出来ていたことを実感出来て「大丈夫だったんだ」と安堵する、だけど自分の中の評価が伴っていなかったら「なんで大丈夫だったんだろう」と疑問に思ってしまう……それがわからないのは、他人に委ねた故に自己評価が形成できていないからであり、さらに自信と責任を持って臨めるまで打ち込んだことが無かったからでもあると思うのです。

 これまで甘奈ちゃんは、『アルストロメリア』という最も近しい存在に囲まれた環境に身を置くことで、自分も輝けていると実感することが出来ていました。しかし、最愛の拠り所が無いG.R.A.D.編では、これまでも自分の価値を把握できていなかったうえに価値を自覚させてくれていた人もいません。甜花ちゃんと千雪さんが大好きで、ふたりは"先に進んでいる"と感じている甘奈ちゃんは、ある意味で"自分は出来ていない"と感じつつ、アルストロメリアの中にいれば大丈夫だと自分に言い聞かせていたのではないでしょうか。それで、アルストロメリアから離れて独りになった今、その"自分は出来ていない"という感情だけが取り残されてしまい、自分がわからなくなってしまったのではないか……と。

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 だけど甘奈ちゃんは、プロデューサーに本音を吐露し、プロデューサーの「受け止めてみせるよ」という言葉に安心して、素直になることが出来ました。それによって死ぬ気で頑張ることへの怖さを低減でき、打ち込めるように成長したのです。そして、今まで受け身で居続けた甜花ちゃんと千雪さんへの感情に、「ふたりに負けないような自分だけの魅力を持つすごいアイドルになる」という決意が付加されました。
 ここで注目したいのが、この感情に至るまで、"今までの甘奈ちゃんを否定していない"という点です。自分の行いを"嫌なところ"と捉えてしまうことを殺さずに、認めたのです。そして、自分を受け入れてくれる人の存在を確かめられたから、恐れずに行動できるようになったのです。
 私は、これを"変化"というよりも、"昇華"という表現の方が近いと思えました。もちろん変わったことは間違いなく、その点では「アルストロメリアの甘奈」の成長に充分寄与したといえます。その上で、「甘奈、今をサイコーに楽しんでくる☆」と言えるようになったのは、"ずっと続けば良い今"ではなく、"これから変わっていく過程の今"を楽しめるようになったという意味での"昇華"なのではないでしょうか。

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 "昇華"という見方について、甜花ちゃんのG.R.A.D.編も同じようなことが言えるのではないか、と考えます。
 甜花ちゃんはたしかに成長しましたが、「誰かに頼らなくても自分一人で出来るようになった」という"変化"と捉えるのは、少し違う気がします。応援されることを糧として、色んな人の力を借りながらアイドルに向き合っていく。その根本は変わっていなくて、そのうえで"やりきること"が出来るようになったのです。「甜花はダメだから」と無意識にかけていたセーブを外して自信を持てるようになった、あるいは自信を持つためのプロセスを知ることができたという成長は、これまでの甜花ちゃんらしさ(identity)を残しつつも次のステップへ進めたという意味での"昇華"と表現できるのでは、と思います。


 大崎姉妹にとって、G.R.A.D.編のそれぞれの試練は、「甜花ちゃんらしさ」「甘奈ちゃんらしさ」を大切にしつつ、それを認めてそのままに、さらに成長を遂げることが出来た"昇華"の物語であると、私は考えています。

 

 


4. 「知られたくない」を踏み抜いたプロデューサーの英断

 今回甘奈ちゃんがプロデューサーに悩みを言い出せなかったのは、「自分が前に進んでいる、成長しているという証明を作りたかった」からです。先述したように、「甜花ちゃんや千雪さんがどんどん変わっていって成長しているのに、同じところで止まってる自分は置いていかれる」という焦燥を、甘奈ちゃんは常に抱え続けてきました。

 これまではみんなの力を借りて一緒に困難を乗り越えてきましたが、今回は否が応でも独りきり。逆に言えば、これを自力で乗り越えれば「自分も変われている」と実感できる絶好のチャンスだったわけです。だから、プロデューサーに嫌な面を見せたくないという感情のほかにも、自力でなんとかして甜花ちゃんたちに追いつき、変化を実感したいという焦りの感情があったのではないでしょうか?


 甘奈ちゃんは先述の感情も相まって、プロデューサーにあからさまな予防線を張ります。本心を気づかれてしまったら「実は甘奈は出来ない子だった」と思われてしまって、成長を証明することができなくなってしまうからです。会話の雰囲気でおおよそ気付かれていることも理解しているため「これ以上踏み込んでこないでほしい」と考えてしまいます。それはプロデューサーも分かってしまっていて、聞くか聞かないべきか悩んだまま時間が進んでいきます。

 

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 しかしながら、予選直前の甘奈ちゃんの独り言を偶然耳にしたことで彼女の深刻さを知り、「話したくない」という拒絶をすり抜けて甘奈ちゃんの本心を引き出しました。「そんな言い方、ずるいよ」と言わせるあたり、普段のプロデューサーに似つかわしくないやや強引なやり方だったのは明白ですが、ここで甘奈ちゃんに差し伸べた救いの手を取ってもらえなかったら、彼女はBADエンドルート直行です。誰からの助けも受けずに悶々としたまま本番に臨んでグランプリに輝けず、それどころかアイドルとしての活動に疑問を覚えてしまい、取り返しのつかないことになってしまっていたかもしれません。

 リスクを冒してでも拒絶の一線を踏み抜けたのは、2年を経てプロデューサーと甘奈ちゃんとの間に充分な信頼関係が築けていたからに他なりません。その判断力とここまでの積み重ねは、間違いなくプロデューサーの手腕が見事なものであったことを証明しているのです。

 


5. 初恋の思い出を告白した真意とは?

 

 おそらく誰もが驚いたであろう、エピローグでの甘奈ちゃんの暴露。あれだけ泣かせておいて最後に何を言われてまた泣くんだろうとばかり身構えていたところ、飛び込んで来たのは予想だにしなかった昔話でした。

 

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「甘奈の初恋ね、幼稚園の頃だったの」

 

 その微笑ましい内容は直前までの号泣ストーリーとかけ離れていて(もちろんこれはこれで素敵なお話だからグッと来てるので全然OKなんですが)、プロデューサー宜しく「どうして教えてくれたんだ?」という気持ちになります。

 直感的に脳死で考えたら、「甘奈ちゃんはプロデューサーのことを……」となってしまうのも無理はありません。もちろんそれはそれでひとつのカタチだと思うので否定はしませんが、私なりに少しだけ考えてみました。


 ここまで書き連ねてきたように、甘奈ちゃんは悩みをなかなか打ち明けられない子でした。それは、伝えることで嫌われてしまうことを恐れていたからで、ありのままを曝け出すことが怖かったからという面も考えられます。ですが今回を機に、プロデューサーへの信頼がさらに増し、"嫌われないようにメイキングした甘奈"ではなく"そのままの甘奈"を見せても良いんだ、という気持ちに落ち着いたのではないでしょうか?

 

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 "そのままの甘奈"を受け入れてくれる、認めてくれる。だから安心して委ねられる。

 そこまでの信頼に至れたのは、きっと甜花ちゃん以外では初めてだったのでしょう。(千雪さんは現時点では断定できませんが、既に同程度の立場として信頼しているはずです)
大切な昔話を教えたのは、「これからも"そのままの甘奈"を見せられるし、理解者であるプロデューサーにもっと知ってもらって、より親密に支え合えるようになりたいから」という思いがあったからなのではないでしょうか。甘奈ちゃんが目指しているのは、まるで家族のような相互の厚い信頼関係なのかもしれません。

 

 

6. シャニマスが見せてくれる極上のエンターテインメント

 

 初恋の話を聞いたとき、ふと思い浮かんだものがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 アイマスの他シリーズもまあまあ触っている私ですが、ここまではっきりと「恋をしている(恋をした)」と言及したアイドルは私の記憶の中ではいませんでした(あるいは私が無知なだけです。すでに話してる子いたらごめんなさい、お知らせいただければすぐ修正します)。
 シャニマスって、本当に"アイドルのすべて"を見せてくれるんだ"、って改めてしみじみ思いました。等身大の女の子を、ありのままを見せてくれる。それも、手放しで信用できるくらい重厚で素敵な物語を紡いでいるうえでやってくれるから、プレイヤーからすれば安心して享受できる。G.R.A.D.編でも、その子の本質に問いかけるような、あるいはマッチポンプの如く疑問をぶつけるような(ちょこ先輩の例が顕著)、描写するのを躊躇うほどのド深層の感情まで全部見せてくれるんです。


 そして、私、もといプレイヤーはゲーム内のプロデューサーにはなれないという点も、シャニマスだからこそ出来る切り口なのかなと実感しました。初恋の話を聞いた時、それが向けられているのは自分ではなく"ゲーム内の"プロデューサーである、と。
 このゲームは(他のもそうかもしれませんが)、ゲーム内のプロデューサーに明確なキャラクター性が用意されています。最もわかりやすい例が透さんとのお話で、かつてプロデューサーは透さんに出会っているということ。もちろんプレイヤーは幼少期のボクっ娘透さんに出会ってなどいませんし、さらに言えば学生の頃に寒い寒いと文句言いつつコンビニの前に仲間とたむろっていたこと(トロイメライ)も、白コートを好んで着ていること(白・白・白・祈)もありません。高身長イケメンにもなれません。
 アイドルが信頼しているのはプレイヤーではなく、"ゲーム内のプロデューサー"。プレイヤーが疑似プロデューサー体験をしているのではなく、アイドルがプレイヤー(プレイヤーの意思を投影したプロデューサー)を意識しているわけでもないのです。そこにあるのはプレイヤーを介さずに成り立っている信頼関係で、プレイヤーはそれを第三者の目線から俯瞰しているに過ぎない、言わば"天の声"なのです。
 だからこそシャニマスは、ソーシャルゲームという形式を執りながらひとつの物語・作品として綴じることができ、読み物(文学)としても楽しむことができる……そんな気がするのです。


 もちろんプロデュースゲームだから、自分が○○のプロデューサーだと自負することもできます。私はあくまで、さまざまな楽しみ方ができるとだけお話ししたいのです。
 ただ、そういう目線で見てみると、甘奈ちゃんがプロデューサーに告白の話を伝えたことが「互いの信頼関係がより深いことをプレイヤーに再確認させるため」という面にも取れるな、と感じたということです。

 そういうのを全部観て、アイドルやこのゲーム自体を心の底から応援したくなりました。いえ、この2年間もずっと応援していましたが、その思いがより一層強くなりました。文字通り"アイドルのすべて"を、成長の軌跡を紡ぎ続けるこのコンテンツを、ずっとずっと応援したい。大崎姉妹の"幸せ"を、これからも見届けたいと、強く願っています。

 

 

 

 

 

7. 需要の無いあとがき

 

 ここまで読んでくださりありがとうございました。

 

 長い。長すぎる。

 

 そう思われた方はごめんなさい。自分でもそう思います。限界感情垂れ流してたら1万字超してました。

 でも、今回のお話は本ッッッッッッッッッッッ当に良い話だったんです……。『薄桃色にこんがらがって』の時も大泣きしてましたけど、今回もやっぱり泣かされてしまいました。アルストロメリアってすごい。大崎姉妹って本当にすごい。

 先ほどもお話したように、G.R.A.D.編で甜花ちゃんも甘奈ちゃんも、ふたりとも2年間の課題に対する"答え"を見つけることができ、今まででいちばん大きく成長しました。ひとりひとりでも充分強くなったふたりが、これから先どんな物語を見せてくれるのか。私は楽しみで仕方ありません。

 

 

 昨今の事情もあり、楽しみがほとんど無い中、娯楽と大きな感動を与えてくれるシャニマスには感謝の念が尽きません。

 本当にありがとう、シャニマス。これからもずっとずっと、応援しています。

 

 

ボタ餅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

p.s. でも甘奈ちゃんの一番は甜花ちゃんだから甘奈ちゃんと甜花ちゃんが結婚してほしい(過激派)

G.R.A.D.編で泣き崩れたお話(甜花ちゃん編)

ついにやってきた新たな空は、度肝を抜く激強サクセスストーリーだった―――

 

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※注意!

この記事はG.R.A.D.のネタバレを大いに含みます。視聴済みの方推奨です。

 

 

 

 

 

目次

1. はじめに

2. 駄弁り(限界)

3. たった数個の単語で紡がれる甜花ちゃんの本質

4. 前川涼子さんの表現力

5. おわりに

 

 

 

1. はじめに

 『Grand.Repute.AuDiton.』通称『G.R.A.D』。

 アイドルひとりひとりに焦点を当てた続編、その情報を知った時から「甜花ちゃんはマジでヤバいぞ」と戦々恐々としていた春の終わり頃。最初に実装されたイルミネと放クラの全員を観終えた時点で涙ぐんでいた私は、そのコミュの想像以上の出来に震えました。

 

エモい

マジでエモい

 

 ダイレクトにそのアイドルの本質を突く試練と、成長して乗り越えていくアイドルたち。現時点でこんなに響くくらいだから、命より大事にしている甜花ちゃんが来たら確実に死に至るとばかり考えていて早1ヶ月、唐突にXデーはやってきたのでした。

 

 

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ふぇ(絶命)

 

 

 その日ばかりは爆速でタスクを片付けて、自学の時間を明日の自分に託し、血眼で帰宅したのを覚えています。
 心の準備を整え、タオルとティッシュを用意し、覚悟を決めてプロデュースを開始。待っていたのは、想像を遥かに超える感動の物語でした。

 

 

2. 駄弁り(限界)

※ここから時系列に沿った感想と考察がごちゃ混ぜで続きます。読みにくくてごめんなさい。

 

 甜花ちゃんはいちばん大好きで、今回真っ先にコミュを観たアイドル。そもそもG.R.A.D.のコンセプト自体が大崎姉妹のド本質を刺すものなのでどう考えてもエライことになるのは目に見えてました。
 巷では「甜花ちゃんがひとりでお仕事?大丈夫かよ〜w」みたいな意見も前々からあったんですが、薄桃色を95794756481億回観てきた方が良いです。というかセレチケで【I ♡ DOLL】を絶対交換してください。甜花ちゃんはもうアイドルなんだよ…!
 だから私は甜花ちゃんが無力だとは全く思って無かったし、むしろ相当成長した姿を見られるんじゃないかとさえ思っていました。それよりも甘奈ちゃんのもとを離れたときにどうやって解決していくのが気がかりでした。


 始まってすぐに、ひとりでの大きなお仕事が降ってきます。個々に直々にオファーが来るようになったという事実、その時点で私は甜花ちゃんの2年間の歩み(ゲーム内時空では○ヶ月?)を感じられて感傷に浸っていました。
 ところが、シーズン1、2のコミュで、徐々に暗い影が忍び寄ってきます。アイドルフェスの練習についていけない甜花ちゃんは、「プロデューサーさんが大丈夫にしてくれるから」「プロデューサーさんならどうにかしてくれるよね」と、Pを頼る発言をしました。そこに、甜花ちゃん自身の意志を感じられないのです。
 思えば、一番最初のコミュの「プロデューサーさんが見ててくれるなら大丈夫だから」というセリフも、一見すればPへの絶対的信頼を感じられる暖かい言葉ではありますが、裏を返せば『プロデューサーさんがいなかったら大丈夫ではなくなってしまう』という自信の無さを表現しているようにも取れてしまうのです。


 そのときに考えてしまったのです。薄桃色での甜花ちゃんは、なぜあそこまで完璧なムーブが出来たのか。当時の私は、『甜花ちゃんは元々そのような深い洞察力を持ち合わせた子で、今まではアウトプットが少し苦手だったから上手く出来ないことが多かった』というふうに結論付けました(師の意見参考に)。そしてその駆動力として、『甘奈ちゃんへの"好き"の感情』という言葉で形容できない尊さを内包するクソデカ感情を挙げました。

bota-ohagi.hatenablog.com


 現状を顧みると、その考えはより一層合致します。甜花ちゃんは、甘奈ちゃんに代表される"誰かのため"なら凄まじい力を発揮出来ます。甘奈ちゃんに関しては、それこそ並の家族以上の強い絆と愛がトリガーのはずです。しかしながら、自分自身に対しては自信を持てずに行動できなかったのです。
 それはおそらく、「自分だけの力で解決したものでなければ自信に繋げられない」という性格を持っているんじゃないか、そしてそれが大きく影響しているのでは、と思いました。以前は甘奈ちゃんがアドバイザーで、今はPが助けてくれる。そのおかげで自分はアイドルをやれていて、自分の力では無い、と。そのPに「甜花自身で考えるんだ」と言われてしまったら、自分には何も無いと思い込んでる甜花ちゃんにとっては八方塞がりで、解決法が無くなってしまったのです。


 予選終了後、どんどん自分を追い詰めてしまっている甜花ちゃんを、私は徐々に胸を締め付けられる思いで見ていました。正確な判断・評価が自分で出来ない、自分だけでは分からない。それは「甜花はダメだから」という呪いの如く染み付いた意識に支配されていたからです。


「ちゃんと、やんなきゃ」

「ちゃんと、出来なきゃ」


 評価がわからないから、抽象的なイメージのまま、ただただひっ迫感に追われている……そんな甜花ちゃんは今まで見たことがなく、「このままじゃまずい、甜花ちゃんが壊れてしまう」という危惧を感じ、私はもうつらすぎて心がしんどくなっていました。


 救いの手が差し伸べられたのはシーズン3、Pがそんな甜花ちゃんを後押ししたことでした。

 直接行動案をアドバイスしてしまったら、例え成し遂げたとしても甜花ちゃんの自信に繋がらない。だから、「何がしたい?」と問いかけることで、「したいことなんて…出来ないのに言っちゃダメな気がして」という思いで自ら抑圧していた甜花ちゃんの心を解かし、本音を引き出す手助けをしたのだと思います。


 きっと甜花ちゃんも、心のどこかで「このままじゃダメだ」と考えていたのではないでしょうか。W.I.N.G.編と感謝祭編では、「変わりたい」という思いを糧にみるみる成長していきました。このG.R.A.D.でも、甜花ちゃん自身成長するための分岐点であることは自覚していたはずです。

 コミュの題名【Id】は"原我"という意味を持ちます。ずっと秘めていた「諦めたくない」という思いを、ここで正直に言えるようになった……先入観や抑圧から脱した、大事な瞬間だったと感じています。
 自分の意志を強く主張する甜花ちゃん、その思いの強さを肌で感じ涙腺が崩壊しました。


 そして迎えたアイドルフェス。肩で息をする甜花ちゃんはかつてない程の疲労感を示唆しパフォーマンスの凄まじさを感じさせるとともに、晴れやかな立ち振る舞いを想起させます。本当に、全力で頑張ったんだなというのを強く感じられて、その時点で涙ポロポロです。
 泣きながら、「甜花ちゃんの立ち位置は、甜花ちゃんの課題を解決するにベストな場所だったのかもしれない」とふと考えました。「テレビに映らない、ひょっとしたらいなくても気づかれないかもしれない」というPのセリフは、"誰からも評価されない"という原初の思惑(G.R.A.D.に向けた足がかり・経験)からは外れてしまうことを意味します。

 しかし今の甜花ちゃんにとって大事なのは、他者からの評価ではなく、自分の中での評価。Pもそれは分かりきっていて、敢えて口に出したのだと思います。


 甜花ちゃんは、「プロデューサーさんにチャンスを作ってもらったのに」と、周囲のサポートが無ければ出来なかったと感じてしまうあたりを未だに引目に感じてしまうところもありました。だけどそれでも、何も出来なかったわけじゃなく、最後まで諦めないで出来ました。レッスン中、休憩しようかというトレーナーの提案に少し喜びを感じつつも、自分を律し「まだやれる」と意思表明した甜花ちゃん。自分を変えるため、成長するためにやり抜くんだという強い意志を、ひしひしと感じられました。


 そしてシーズン4コミュの最後のセリフ。

 

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「甜花……頑張った……!」


 この言葉自体は、これまで何十回何百回と聴いてきたものです。しかしながら今回の言葉は、明らかに一線を画すほどの達成感、歓喜、感動に満ち溢れていて………
 この時点で私はもう泣き伏していて、2年を経てついに甜花ちゃんにとっての大きな課題が解決された瞬間だと思いました。

 これから先、ひとりでの仕事が多く舞い込んできても、今の甜花ちゃんなら乗り越えられるはずです。それは「もう失敗しない、落ち込まない」という意味では無く、「クリアするためのスキルを身につけた」という意味での経験値を得たからだと考えています。この経験が、"大崎甜花の答え"のひとつなのだ、と。決して終着点ではありませんが、ひとつの大きな区切りになったな、と感じたのです。


 G.R.A.D.優勝後、甜花ちゃんは感情を爆発させるような表情を見せました。笑顔というよりも「優勝できて良かった、甜花は頑張れたんだ」というような嬉しさや安心感に近く、泣き崩れたかのような錯覚さえ感じました。


「みんな、応援してくれて……」
「だから、優勝できたの……みんなが、いたから……!」


 笑顔で語るそのセリフには、周囲への引け目などありませんでした。大切な人たちへの感謝と自分が頑張れたという自信、そして心からの喜び……甜花ちゃんの新しい空が、広がった瞬間でした。

 

 

3. たった数個の単語で紡がれる甜花ちゃんの本質

 

 先程も少し触れましたが、甜花ちゃんのG.R.A.D.編はコミュタイトルに込められた意味がとても重要だと感じました。意訳と私の解釈を以下に書き綴ります。

 

 

  • プロローグ【I do】

"甜花、やってみる"
 doはよく強調の意味で使われます。ひとりでの大舞台、甘奈ちゃんたちが居なくとも頑張りたいという甜花ちゃんの決意が込められているのではないでしょうか。

 

  • シーズン1【Idel】

"空っぽ"
 idelは「空の、無駄な」という意味です。このコミュでは「プロデューサーさんが大丈夫にしてくれるから」と、誰かが助けてくれるという他人本位の心内を口にします。それは、「甜花は何も出来ないから」という、自分自身ではやりようがない空っぽの意志が漏れ出ていたようにも思えます。

 

  • シーズン2【Ideally】

"理想的に"
 そのままの意味です。甜花ちゃん自身は何も出来ないけど、他の人の助けがあるから頑張れる。自分では限界だと思っているから、それが自分の理想なんだ、と無意識に考えているのかも…?

 

  • シーズン3【Id】

"原我"
 idは精神分析学におけるエス(原我)と同義とされ、エゴ(自我)の基底をなす本能的衝動であるそうです。自我自体も意識されないようなヒトの行動原理の概念ですが、その自我自体はエスからの要求を経て形成される、とのこと。ぅゎ哲学っょぃ
 先程も触れましたが、甜花ちゃんの「諦めたくない」という思いは、挫け始めた最初から抱いていた深層での情動だったのではないでしょうか。これまでの経験・自信の無さから怖くなり抑えてしまっていたけれど、Pの助けもあって正直に吐露できるようになりました。

「変わりたい、頑張りたい」

 アイドルになったときからずっと抱いていた思いに、迷わずに向き合えた瞬間。だから、この言葉がコミュタイトルになっているのかなと思いました。

 

  • シーズン4【Ideal】

"理想"
 おそらく、客観的に見たこの物語の最高の理想は、「アイドルフェスで好成績を残し、センタークラスの活躍を見せ、G.R.A.D.への完璧な足掛かりを組み、優勝へ繋げる」ことだったのでしょう。本当に完璧に上手く行けば、の話ですが。
 でも、甜花ちゃんとPにとっての理想は、ちょっと違うかたちだったのかもしれません。


「甜花ちゃんがひとりで成長すること」
「甜花ちゃんの自信を育むような経験にすること」


 もしも一般的なお話なら、ここから甜花ちゃんが凄まじい成長を遂げ、センターをもぎ取って活躍するようなものになっていたでしょう。でもそれは甜花ちゃんの本質からはかけ離れた、"安直なサクセスストーリー"に成り下がってしまいます。
 大事なのは踊った場所では無く、踊った経験。最後までやりきったという揺らぎない事実こそが、甜花ちゃんにとっての理想のかたちだったのです。

 

  • エピローグ【identity】

"自分らしさ"
 号泣必至の優勝コミュが明け、次に始まったのは甜花ちゃんのいつも通りの日常。「お昼寝してていい…?」とお願いする甜花ちゃんは、成長したり変わったりする一面があっても変わらない"甜花ちゃんらしさ"です。
 これまで約束でも「充電、完了…!」と嬉しそうにしていた甜花ちゃん。甜花ちゃんがお休みする意味は以前のような「遊びたいから」では無く、「いい仕事のため、いい遊びのため」へと昇華されました。それでも、ひとりでの大仕事を成し遂げた後だって甜花ちゃんは甜花ちゃんという揺らぎない平和が続いているんだ、とほっこり出来たのでした。

 

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 変わるもの。変わらないもの。アルストロメリアに2年間ずっと共通するコンセプトは、G.R.A.D.編でも健在でした。そして、幸せそうな眠り姫の言葉で終わるこの物語は、やはりひとつの"大崎甜花の答え"なのだろうな、と感じるのでした。

 

 そして、ご覧いただいてわかるように、コミュタイトルの全てに「id」というスペルが共通しています。

 そこから「idol」という単語を連想させるのは容易で、【I ♡ DOLL】のときのようにシャニマスの言葉選びの上手さに脱帽します。限られた単語からピックアップし、かつコミュの内容にも繋がるようになっているのはまさに芸術です。ノーベル文学賞シャニマスしか勝たん。一生勝てない。

 

 

4. 前川涼子さんの表現力

 

 甜花ちゃんの声を担当している涼子さんの表現の凄さ(ずっと以前からりょんちゃんのスゴさは感じてる)にも打ち震えました。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


度々登場した、沈黙のみの文章。だけど甜花ちゃんは、文字に起こせないけれども声を発しています。吐息、呼吸、吃り、躊躇い。そこからは甜花ちゃんの不安や焦り、心配、葛藤がひしひしと伝わってきます。言葉だけじゃなくても表現することは出来るという、涼子さんの"役者"としての素晴らしさを肌で感じました。誰よりも甜花ちゃんを理解していて、表現してくれるひと。それが涼子さんなんだなぁ、と……。本当にありがとう、りょんちゃん………


(まだりょんちゃんのチョクメを見たことが無い人はこの機会にぜひ!!近いうちにG.R.A.D.編の感想も来ます!!それ以外にもりょんちゃんのありのままを見られる最高の文明です)

ani.chokume.com


 そしてこのセリフ(文字列)の場面を見た時、聴いた時ほど、「ボイス収録が間に合っていて良かった」と感じたことはありません。そのような言葉以外の表現も含めて感動がひとしおのモノになっているわけで、きっと読み物だとしたら印象は変わってしまっていたと思います。シャニマスだからこそできるエンターテインメントなんだなぁと、しみじみ感じるのでした。

 

 

5. おわりに

 

 スプパも2ndも無くなってしまって、失意の中やってきたシャニマス2nd Anniversaryキャンペーン、そして待望の続編。そこには昨今の暗い世情を吹き飛ばすような快晴が広がっていました。素晴らしい物語とアイドルたちの輝きを見せ続けてくれるこのコンテンツに、すごくすごく元気を貰っています。

 ありがとうシャニマス、ありがとう甜花ちゃん。

 これからもずっと、応援しています。

 

ボタ餅

 

こんがらがったお話

《《《注意》》》

・本記事はシャニマスのストーリーイベント『薄桃色にこんがらがって』について言及しています。このイベントコミュを観ていない方にはネタバレとなってしまうためまずはそちらの視聴を強くお勧めします。というか観てください。全人類観てください。幸福論は必修科目です。

・下書きなしのぶっつけ本番で書き殴っているので以前の記事に比べてかなり質が悪いです。ただの限界です。ご容赦ください。

 

目次

1.はじめに

2.イベントコミュの天才すぎるテーマ設定

3.”反対ごっこ”がもたらした成長への道筋

4.甜花ちゃんの名采配を探る

5.限界あとがき

 

 

 

1.はじめに


 こんにちは。ボタ餅です。
 いつもはここでVelvetRoseの考察とか怪文書とか書いているのですが、今回はデレマスではなくシャニマスについて駄弁りたいと思います。

 

 

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イベント開始直後に見て己の死を悟ったイラスト

『薄桃色にこんがらがって』

 

 予告が出た時点で「あっこれは死ぬやつだ」と確信こそはしていたものの、蓋を開けてみて飛び込んで来たのはそんな処刑宣言を遥かに超えるドヤバイストーリーでした。だいたい第2話くらいからすでに泣いてたし、最後らへんはもう涙止まんないし、Twitter上でこのイベントコミュの話してる人を見かけただけで泣きかけるくらいには限界になってました(そんなのいつも通りだろと言われてしまったら何も言い返せない)
 さらには前川涼子さんのチョクメでさらに大感情になり、メールを読みながら泣くヤバイ奴になってしまって、「これはあれだ、VelvetRoseの時と同じやつだ、言語化しないとダメなやつだ」と悟ってしまい、こうして筆を取ったわけです。研究引き継ぎと就活で忙しい時に何してるんだろ自分
 そんなこんなで書いていきますがいつも以上に文が乱雑です。あと時間の関係であまりまとまってないので流し見程度で読んでくだされば幸いです。


追記:結局時間が足りそうに無く、今回は甜花ちゃんについてをメインに考察しました。もちろん甘奈ちゃんと千雪さんにも特大感情になっちゃってるのでいつか詳しく喋り出すかもしれません。もうホント3人とも大好き

 

 そのお詫びといってはなんですが、私が以前ちゃんと練った上で時間を懸けて生み出した(今回の考察のおかげで自作なのに解釈違いを起こした)大崎姉妹ssを置いておきます。興味があればこちらもどうぞ。

 

www.pixiv.net

 

 

 

2.イベントコミュの天才すぎるテーマ設定


 今回のストーリーが何故これだけ刺さってしまったのか。コミュを観終わった直後にこれについて感じたことを率直に書くとするならば、


『"アルストロメリアの衝突"を、"勝敗の決まっている出来レース"で描いたこと』


 これに尽きます。
 まずは前者について。(各アイドルの詳細な考察でも述べていきますが)アルストロメリアは基本的に『幸せな空間』を演出するユニットです。シャニマスの5ユニット中、ある意味で『偶像(アイドル)』を最も表現しており、よくドラマやゲーム作品で取り上げられるような特異なギスギス感とは程遠いユニットです。「アルストロメリア見てたら寿命伸びた」とか「日本が核を持たない理由」とか限界オタクがよく言ってますがあながち間違っているわけではなく、素直に最速で幸せになれるアルストロメリアはそんなユニットなのです。
 だからこそ、このテーマは彼女達にとってアブノーマルでありタブーな領域でした。各ユニット推しにそれぞれ激震を走らせたファン感謝祭編でさえこのテーマには触れることがなく、主に甘奈ちゃんの葛藤について語られました。アルストロメリアだけに限らず、"葛藤"はシャニマスでよく取り上げられるテーマです。アンティーカやストレイライトはそのさらに先のぶつかり合いまで描かれることが多かったですが、ことアルストロメリアに関しては決して触れられることがありませんでした。(大満足なんですけどね!!!ファン感謝祭編は全部素晴らしいので!!!)
 しかしながら今作はついにセーフティが外れ、オーディションと千雪さんの過去を媒体とした"ユニット内の戦い"が描かれることになります(むしろこれくらいで良かった、本当にギスギスしたらマジで身を投げてましたそんなアルストは見たいけど見たくない)。これまで触れられなかったからこそ、新しい見解や感情が生まれる瞬間を目の当たりに出来たんです。だからこんなに泣けるんですかね………。
 ファン感謝祭編の、その先の物語。無限に成長し続けるこのコンテンツ一生好きです。

 


 後者について。


――そ、そんな話聞いてないですよ……!それじゃあ出来レ――


 オープニングでプロデューサーが言いかけたこの言葉。聞いた瞬間に確信しました。

 

Straylight.run()の逆だ!!!!!!

 

 ストレイライトの初ストーリーイベント、初めから勝敗が決まっていた『海辺のアイドルバトル』。アイドルものには欠かせない王道モノのこのテーマにおいて、アイドルマスターのアイドル観に一石を投じ、逆光に負けない光を放つストレイライトだからこそ、彼女たちは"確定負け"を最大限に魅力的に惹き出していました。冬優子がユニットメンバーに"冬優子"を見せるきっかけになったこのテーマは、逆にこれが無ければストレイライトが消滅していたことすら意味しています。いずれにせよ彼女たちには避けては通れない門だったでしょう。同時に、他のユニットでは良い意味で二番煎じになるテーマになってしまったなと、思い込んでいたのです。そう、去年までは。

 

来たじゃん!!!!!

 

 ビビりました。同時にシャニマスのライターは本当に天才だと思いました。まさかその話題を、"確定勝ち"の観点でもう一回引っ張ってくるなんて、しかもそれをそういうものとは無縁そうなアルストロメリアにやらせるなんて………天才です。マジで天才です。ノーベル文学賞あげたい。
 そしてさらにその役目を甘奈ちゃんに背負わせる点も鋭かったです。観進めるうちに理解することが出来ましたが、"確定勝ち"を背負うことが出来たのは3人の中で甘奈ちゃんしかいませんでした。そして負けてしまう役目は千雪さんにしか出来ません。甜花ちゃんではいけなかったのです。その点は後述。

 また、今作は回想シーンが随所に散りばめられていました。無声でテキスト無しの空白によって、物語と心情に深みが増したのです。挑戦的な演出の数々は、今作の感動を惹き立てるに充分な役目を果たしたと言えるでしょう。

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第4話。アルストロメリアの大事なシーンが駆け巡り、思い出ボムが大爆発しました。

 

 

3.反対ごっこがもたらした成長への道筋


 今作のもうひとつのキーワードは、面接練習で千雪さんが提案した"反対ごっこ"です。これが無ければ確実にバッドエンドに向かっていたと断言できる重要なカギです。

 『薄桃色にこんがらがって』を語るに留意すべき最重要項目は間違い無く"千雪さんの過去"を巡る葛藤でしょう。【ドゥワッチャラブ!】でようやく完結するこの項目は、今作のストーリーの中枢を司りつつ、甘奈ちゃんと甜花ちゃんにもスポットライトが当たるようになっている非常に繊細で複雑な議題でした。そんな千雪さんは今作のヒロインであり主人公、ひいては助演をも完遂したキーパーソンです。まずはそんな千雪さんについて考察してみます。


 小さい頃からの憧れの雑誌だった『アプリコット』のオーディション。甘奈ちゃんがシードに選ばれていることに行き場の無い嫉妬を覚えてしまった彼女は、本当の気持ちを言い出せずにいました。


『甘奈ちゃんならグランプリになれるし、ぴったりだってわかってる。自分が出場したら、迷惑をかけることも。』
『だけど、ずっと憧れだった雑誌なのに、大事な宝物だったのに。私も出たい、憧れの世界に立ちたい。』


 相反する気持ちに板挟みになった末に出場することになった千雪さん。しかしそのことで余計に状況を掻き乱してしまったことを酷く後悔することになりました。
 千雪さんは、アルストロメリアの最初のイベントの時から、甘奈ちゃんと甜花ちゃんの中に自分が入ることを遠慮していました。自分の思いを強く主張できないのは、『大人だから』『自分の方がお姉さんだから』という理性が働いていたからです。

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『満開、アルストロメリア流幸福論』第4話。ふたりのことを思うあまり、遠慮しがちな言動が随所に見られました。


 しかし心の内には子供のような純粋な気持ちを持っているのが千雪さんの魅力です。過去のイベントでも何度も垣間見えていましたし、『アプリコット』への気持ちがそれを証明しています。


 『それなのに、選ばれたのは甘奈ちゃんだった。自分は負けることが確定している。だけどそんなことは主張できない。自分は大人だから。お姉さんなんだから。』


 ただでさえ甘奈ちゃんやアルストロメリアに迷惑をかけることが辛いのに、そんな"こんがらがった"感情になってしまったから、千雪さんは本当の事を言えなくなってしまいました。対立してしまうのが怖くて、そうしたらアルストロメリアとしていられなくなってしまうと思ったのでしょう。


 そんな、行き詰まった感情を吐き出すことが出来たのが、"反対ごっこ"だったんです。

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「甘奈ちゃん、オーディション落ちたらいいのにーーー!」

最初に飛び出したこの言葉は、本心だし本心じゃなかった。どちらも違うし、どちらも正解だったから、言うことが出来たんです。"反対ごっこ"だったから、吐き出すことが出来たんです。
 もし千雪さんが"反対ごっこ"を通じて胸の内を曝け出すことが出来なかったら、アルストロメリアはぶつかり合うこともなくそのまま散ってしまっていたかもしれません。千雪さんにとってひとつの殻を破るきっかけになったのは、間違い無くこの"反対ごっこ"のおかげでしょう。「遠慮はしないんだ、もう」というエンディングの言葉にも込められているように、アルストロメリアはさらに"家族のようなユニット"に近づけたに違いありません。(年賀状はこのことを預言していた……?)

 そして、この戦いにおいて負けを背負うのは、大人と子どもの両面を見せつつも”卒業”することが出来た千雪さんにしか出来ないことなのです。負けてしまうことでも成長に繋げられるのは、今回のケースに限っては彼女しか適合出来ません。決して美談として語るつもりはありませんが、負けたことの悔しさが、今後の彼女をさらに成長させる一手に繋がるはずです。

 

 

 "反対ごっこ"の重要性は、甘奈ちゃんにとっても同じでした。"確定勝ち"になってしまったのが甘奈ちゃんだったからこそ、これを通じた千雪さんと甜花ちゃんの思いを聞けなければ瓦解していたことでしょう。
 甘奈ちゃんが最も恐れていたのは、『自分のせいでアルストロメリアが無くなってしまうこと』なのではないかと私は考えています。W.I.N.G.編とファン感謝祭編で、甘奈ちゃんが"今を大事にしたい"思いを強く持っていることは周知の事実です(これに関する考察はssを通じてたくさん書いたので詳しくはそちらを参照してください)。

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『ファン感謝祭』編は、変わること、変わりたくないことが重要なポイントでした。

 甘奈ちゃんが自責の念に駆られることは、過去のイベントでも多数見受けられます。相手を想うあまり、自分のせいで不幸にさせてしまったら、居た堪れない気持ちになる…甘奈ちゃんは、本当に優しい子なんです。その優しさ故に、これまでも今回もたくさん悩んでしまったんです。

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『完録!クエストロメリア!』第5話より。周囲を気遣ったことで失敗してしまうことも。

 

 第5話のタイトルにもなっている"こわい"という感情は、『自分が勝ってしまうことで千雪さんを悲しませること』、『自分が負けてしまうことで今までのような関係でいられなくなるかもしれないこと』という、どちらに転んでも避けられない事態を危惧していたからではないでしょうか。
 本当は戦いたくない。それは紛れもなく甘奈ちゃんの本心です。アルストロメリアの中で対立なんて起こしたくない、そしたら今の関係が壊れてしまうから。


 だけど甘奈ちゃんは、"反対ごっこ"で千雪さんの想いを聞いて、自分を奮い立たせることが出来ました。千雪さんの本当の思いに応えること、全力で戦って向き合うことを決めました。それは、"3人でアルストロメリア"という言葉の本当の意味に気付いたからです。

 

「いい時だけ一緒なんじゃなくて……そうじゃない時も一緒なんだってこと」

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 ぶつかり合うことは、今を大事に"しない"ことではありません。今も未来も大事だから、時には対立するんです。
 "反対ごっこ"がもたらしたもの、それはアルストロメリアが避けてきた『衝突』に向き合うきっかけだけでなく、甘奈ちゃんにとっての『今を大事にしたい気持ち』の変容なのではないでしょうか。そしてその変容によって、甘奈ちゃんたちは3人でライバルとなり、3人でアルストロメリアとなれたのです。"反対ごっこ"があったからこそ、アルストロメリア「新しい季節を迎える」ことが出来たのだと、私は強く思います。

 

 


4.甜花ちゃんの名采配を探る


 今作は全部ヤバすぎてあまり話題に上がりませんでしたが、甜花ちゃんの名采配について大声で語りたいんです。そして同時に、私自身の今までの解釈を改めなければならなくなったきっかけでもありました。


 甜花ちゃんと言えば?と聞くと、「お休みを要求しまくる」「失敗ばかりする」「すぐに不安になる」など、"出来ない子"という初期印象がどうしても先行してしまいます。ですが、そこからW.I.N.G.編やファン感謝祭編、各pSSRのストーリーを通して、『出来ない子から出来る子へ成長していったシンデレラストーリー』を体現していきます。その変わり様、成長の軌跡があまりにも尊く、私は彼女にゾッコンとなりました。(そして可愛い。とても可愛い。)
 その成長過程を充分に理解しているつもりだった私が、衝撃を覚えた今作。甜花ちゃんの行動が、完璧すぎたんです。もちろん今回のイベントの中で成長した部分もあり、これまでの2年間の成長も積み重なっていますが、それでもあまりにも出来過ぎていて違和感を感じてしまうくらいに。


 でも、その違和感自体が間違っていたんです。甜花ちゃんは、出来る子だったんです。私自身が彼女を理解していなかったのです。


 コミュ第3話で甜花ちゃんはオーディションの真相を偶然耳にし、第4話でプロデューサーの元へ自ら赴いて問い詰め、事の詳細を知ってしまいました。その時点で、甘奈ちゃんの葛藤、千雪さんの想いを含めて全ての情報を得ているのは甜花ちゃんだけ。一歩でも間違えればユニット崩壊さえ見えてしまった綱渡りの状態で、彼女は足を踏み外すことなく幸せな未来に辿り着きました。その行動力と洞察力は、果たしてアイドルの活動を経ることで全て身に付けたものだったのでしょうか?


 違う、と言うことを思い知らされました。甜花ちゃんには初めから、全てを成し遂げる力が備わっていたのかもしれないのです。


 例えば、クエストロメリア。落ち込んだ雰囲気を打破しようと、KPTを再び提案したのは甜花ちゃんでした。甘奈ちゃんの怪我にいち早く気付き、苦手だと自覚しながらもインタビューを代わりにやろうとしたのも、甜花ちゃんでした。こちらに関してさらに言及すると、代わることがズルだと分かっていることから、「妹を気遣って助けたいと思った」という単なる感情論では無く、各々の事情や変えられない使命(仕事という環境)を加味して理性的に考えた結果導いた答えだということがわかります。総じて、クエストロメリア内の甜花ちゃんは、周囲の状況を把握したのち自分の中で考察して、適切に行動に移すことができているのです。

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『完録!クエストロメリア!』より。状況判断から最初の提案へのプロセスが3人の中で最も早く、好転へのきっかけを作り出しています。


 例えば、海の家。混雑する接客業務で甜花ちゃんは抜群の記憶力を見せました。「その気になればなんでもできるんだって知ってもらわなきゃ」という甘奈ちゃんのセリフにもあるように、以前からでもこれだけの実力を発揮することが可能だったと推測できます。また同イベントのエンディングでは、線香花火が苦手だった甘奈ちゃんを長年気にかけていたことがわかります。自然な素振りでさりげなく気遣い、相手を思いやる気持ちを持っていること、先見の明を持っていること。これらはアイドルとして培ったものではなく、もともと甜花ちゃんに備わっていた力として見るのが正しいと思われます。

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『夏は短し海でしょ!』エンディングより。千雪さんが線香花火の存在に気付いた直後に、甘奈ちゃんを心配する素振りをすぐ見せていました。


 『Bloomy!』のオーディオドラマにも関連していると思われるエピソードが収録されています。幼少期に迷子になった大崎姉妹は、両親を探すべくあてもなく彷徨います。泣き出す甘奈ちゃんをなだめ、自身も不安を感じつつも、姉として果敢に行動した甜花ちゃんは、既にその時から能動的に動くことが出来る子だったのです。
 幼少期における成長の決定打となったのは射的の一件だったのではないかと考えられます。時系列は不明ですが、射的の景品が獲れなくて甘奈ちゃんを悲しませてしまったことをきっかけに(はたまた明かされていない別のエピソードがきっかけで)ゲームと出会ったのではないでしょうか。ゲームの中には思考力や洞察力が試されるものも数多く存在します。また、射的に代表される非日常的なスキルも身につく機会があるでしょう。その中で甜花ちゃんはそれらの力や行動力を養ったのかもしれません。そしてその根幹を成していたのは紛れもなく、大切な妹、甘奈ちゃんへの"好き"の感情です。"家族愛"というこれ以上無い強い結びつきが、甜花ちゃんの潜在能力を伸ばしたトリガーだったのではないでしょうか。

 

 

 今回のイベントに戻ります。
 第5話、ジンジャー入りミルクティーから始まった会話で、甘奈ちゃんは思わず苦悩を吐露します。既に真実を知ってしまっている甜花ちゃんにとって、その時点での甘奈ちゃんの葛藤は結果的に空中分解してしまうこともわかっていたはずです。けれど、甜花ちゃんは本当の事を言いませんでした。その後甘奈ちゃんは一度オーディションを辞退しようという決意をしてしまいますが、もしこの時に甜花ちゃんが真実を伝えていたら、辞退の決意は揺るがないものになってしまっていたでしょう。例えプロデューサーや甜花ちゃんが再度説得したとしても、「自分のせいでこうなった」という自責の念から逃れられなくなっていたのではないかと私は思います。言うタイミングを見計らった甜花ちゃんの判断は賢明だったと言えます。
 少し話は逸れますが、これは第4話冒頭でのはづきさんの行動によく似ています。はづきさんも真実を知っていて、逡巡しながらも「……普通に考えれば、」と正論を諭すに留まりました。コンプライアンス的にも当たり前のことと言われれば当たり前ですが、先々のことを見通して最適な行動を取るのは大人の思考回路です。

(さらに話が逸れれば、はづきさんがこのときに「大人じゃないんだってば、私たち〜」と伝えたのが超絶ファインプレーです…。千雪さんが抑えようとしていた感情は"悪い感情ではない"と肯定してあげること、それが出来る立場は283プロのアイドルに対して唯一呼び捨てできるほどの仲であるはづきさんしかいないと思います)

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第4話冒頭。千雪さんと真の対等な立場で悩みを聞いてあげられるのは、きっとはづきさんだけ。

 

 そして、"反対ごっこ"のときの叫びにも、甜花ちゃんの聡明さが表れています。
 甜花ちゃん自身も『なーちゃんに勝ってほしい』『千雪さんに勝ってほしい』という同時には叶わない思いが渦巻いていました。それを"反対ごっこ"で自己整理させるとともに、戦わないことが最悪の結末を産んでしまうことを、甘奈ちゃんに気付かさせたんです。

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「……なーちゃん、負けてもいいよ……!負ければ……壊れちゃう、から……!大事なもの………!」


 この印象的な叫びを反対に紐解いてみると、『オーディションに勝って。勝てば、大事なものは壊れないから』ということになります。「負けた時が、怖いよ…」と告白しているのを聞いている甜花ちゃんだからこそ、正直に伝えたかったのでしょう。

 ふたりが戦わないことではなく、本気で、全力で戦うことが大事なんだ、と。甜花ちゃんは、第4話でのプロデューサーの言葉を思い出して叫んだのだと思います。これも、第三者の立場にいて真実を知っていた甜花ちゃんだからこそ出来た立ち回りです。


 そして最大のファインプレーは言わずもがな、オーディション会場に先生を連れて行ったことです。先ほどの"オーディションに勝って"というのは"確定勝ち"のことではなく、双方が納得のいく勝敗によって勝ったと思わせること。『アプリコット』の制約に縛られている限り、いくらふたりの間で戦ったとしても、絶対に勝利判定が出てしまう甘奈ちゃんは納得のしようがないし、千雪さんは結局戦う対象が自分の自己満足だけになってしまいます。この、ふたりの別々の戦いになってしまっている状況を、オーディションの先生というジャッジの介入によって同時に解決することが出来ました。プロデューサーでも甜花ちゃんでもないさらに別の人物によって、主観が入らない公正な判定が可能になり、出来レースでしかなかったオーディションに意味を持たせることが出来たのです。その後、先生がふたりに勝敗を伝えた描写はありませんでしたが、千雪さんがエンディングで「悔しい………悔しいなぁ………っ」と涙を流していることからも、甘奈ちゃんが正式に勝ったと予想できます。オーディション後のふたりは涙を見せることこそありましたが、その表情は晴れやかです。甜花ちゃんの機転のおかげで、意味のある戦いになったのだと容易に想像することができるでしょう。

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後悔が残らない、納得のいく結果。むしろ、勝負に挑んだことでより良い未来を紡ぐことが出来ました。


 自分の席を譲ってでも、ふたりのために決意して行動した甜花ちゃん。甘奈ちゃんと千雪さんを思う気持ちと的確な判断が身を結んだ、名采配だったと思います。

 

 

 

 

 

5.ただの限界駄弁りあとがき


 ここまで読んでくださりありがとうございました。


 もう全ッ然まとまってませんでしたねwww今自分でも読み直してそう思ってます。駄文に付き合わせてしまって申し訳ありません。
 それでも今回のコミュは本当に素晴らしかったです……。ファン感謝祭編とか去年のプロデューサー感謝祭の特別コミュとかでもボロッボロ泣いてましたが、今回のは別ベクトルの感動があってボロ泣きしてました。アルストロメリアの成長、甜花ちゃんの成長を観れることが本当に嬉しいです……(T ^ T)

 今までもわかってはいましたがシャニマスのライターはやっぱり天才です……。第2話でウォーキングの練習をしているときの「力を抜かなきゃ……屈んで、ゴリラになっちゃうんだよね………!」という甘奈ちゃんのセリフ、その時点ではユーモアのひとつだし甜花ちゃんが「なーちゃん、ゴリラさん……それも……可愛いよ……!」とか言うし尊いなぁ(脳死)としか思ってなかったのに、エンディングへの伏線になっているなんて思いもしませんでした……。

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死角から伏線が飛んできてひっくり返った瞬間

 直後の回想で「甜花も、一番大事なもの…守りたいから……」って言われるし本当に甘奈ちゃんと千雪さんのこと大切で好きなんだなぁって……もうずるいです……もはやずるい………アルストロメリアも甜花ちゃんも甘奈ちゃんも千雪さんも一生推す………

 

 

 今回の考察に至ったのは、まず前川涼子さん(以下、りょんちゃん)のチョクメがきっかけです。内容をここで言うことは出来ませんが、甜花ちゃんとアルストロメリアに関するりょんちゃんなりの考えをたくさん伝えてくれました。それを読んで『薄桃色にこんがらがって』の映像がフラッシュバックして涙ドバドバになってしまって……それと同時に、りょんちゃんの甜花ちゃんへの考え方が自分の考察よりも正解に近いのではと思ったので、考察し直してみようと思ったのが最初のきっかけです。


 次に、Twitter上でやつはしかけらさん(@L_2_S)の大崎姉妹考察ツイートを見かけたのもきっかけのひとつです。以下に引用します。

  このツイートの③にあたる、『甜花ちゃんは元々出来る子だったのでは?』という考えにかなり感化されました。他の説も拝見し、自分の今までの考察に検討が必要になると思って文字に起こしてみた次第です。やつはしかけらさんには許可をいただき、おかげで書き上げることが出来ました。この場をお借りして感謝申し上げます。
 VelvetRoseの考察でも同じようなことが言えますが、こうやって物書きをしていると、自分が思い付けなかった新しい考え方を知ることができてすごく充実した気分になります。さまざまな考え方を知ることで甜花ちゃんたちへの気持ちがより一層深まって、さらにコンテンツを楽しめるんですこれだからやめられない。みなさんにもオススメです。無限に時間が喰われますが。

 

 なんだか着地点が見えなくなってきたのでここで終わります。ひとまず最優先で整理したかった感情は整えられたので一安心です。こんな駄文に最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました!

 

反対ごっこします。アルストロメリア、大ッ嫌いです!!!!!!!!!!

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p.s. 反対ごっこ終わり ガシャローテ組んだ高山P許さない

 

ボタ餅

VelvetRoseを応援するために頑張ったらライブ後大号泣したお話

《《《注意》》》
 この記事は前回の記事の続きのような立ち位置ですが、私自身の出来事(自分語りに捉えられ得る事項、暗い話もあり)について語っているものです。フラスタ企画について触れてはいるものの、純粋にボタ餅という人間の個人の見解が多く含まれています。

 ですので、フラスタ企画だけについて知りたい方にはニーズに合わない可能性が高く、企画運営とは切り離して読んでいただく必要があります。興味が無い方、もしくは不快に思ってしまう方はここでページを閉じてください。

 VelvetRoseが良すぎて限界になってる様子だけ見たい方は下の記事へどうぞ。


↓前回の記事

bota-ohagi.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


目次
1. はじめに
2. フラスタ企画立ち上げに至るまで
3. 企画立ち上げ〜12月の活動
4. 12月27日〜企画再始動
5. 年明け〜楽屋花・プレゼント完成まで
6. ライブ当日
7. おわりに

 

 

 

1. はじめに

 この大阪公演は、私にとってはただのライブ参戦ではありませんでした。私にはある重要な目的があり、その完遂のためにも行く意味がありました。

 

VelvetRoseフラスタ企画』。

 

 昨年の6月に発足した、佐倉さんと関口さんのおふたりにお花を贈る企画です。

↓TwiPla

twipla.jp


↓立ち上げ時

 

 

 途中で企画変更を行い、楽屋花とプレゼントを贈る内容となりました。そのプレゼントを無事に贈り届けるため、そしてVelvetRoseの初舞台を見届けるため。これが私の大阪公演での目的でした。
 前回の記事で「色々なことがあり」と言いましたが、その大きな要因はこの企画でした。この企画をやっていたからこそ、ちとせちゃんと千夜ちゃんに特別な思い入れができ、あのライブを最高に楽しむことができたんだと確信しています。

 

 このページでは、なぜこの企画を立ち上げたのか、そしてどんなことがあったのか、そのお話をさせてください。要するに備忘録です

 

 


2. フラスタ企画立ち上げに至るまで

 2019年2月末、Grooveイベントの予告で出て来たのは、初めて聴く声、初めて聞く名前のアイドルでした。賛否両論だった声付き新アイドルに対し、私は困惑しつつも心の何処かで興味を抱いていました。
 「新しい子だしコミュくらいは見ておいた方が良いだろう」そう考えた私は、15時からイベントを走り始めます。まずはGrooveをやって一回イベ曲をやってみて、その曲の"強さ"に驚きました。イベントページのイラストの"強さ"も相まって俄然興味が湧いた私は、イベントコミュをすぐさま全解放までやって、一気見したのです。
 結果はお察しの通り。あのイベントコミュはあまりにも衝撃的で、私はちとせちゃんと千夜ちゃんの魅力に惹かれてしまいました。類似する例の無い主従関係。自らの死期に言及する令嬢。Pの指示に反して主だけを崇高する僕。シンデレラガールズどころか、アイドルマスター全般で見ても全く新しい切り口のアイドルに、大きな魅力を感じました。
 純粋に知りたくなったんです。この子たちは今後アイドルとしてどうやって成長していくんだろう、と。その先を見てみたい、と。
 当時のTwitterの状況は言わずもがな、皆さんがご存知の通りでした。それが全く関係無いとは正直言えません。それでも私は「自分に何か出来ることは無いか」「ちとせちゃんと千夜ちゃんのことを知ってほしい」と本気で思ったのです。それまでアイマスには4年間触れてきて、各シリーズで"担当"として愛でていた子はいたものの、その時ほど「本気で応援したい」と思ったのは初めてでした。その後の経験のおかげで甜花ちゃんたちにもどっぷり浸かっていったわけですが
 イベントを走りつつ宣伝し、イベント後もコミュやMVでのダイマを発信し続けました。少しでも、ふたりのことを知ってもらうために。少しでも、ふたりのことを好きになってもらえるように。そして何より自分自身が、VelvetRoseを"理解"するために


 私にとって『VelvetRoseフラスタ企画』は、そんな「ちとせちゃんと千夜ちゃんを応援したい」という目的のための、ひとつのプロジェクトだったんです。

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企画の始まり。全てはこの画像から始まりました

 

 

 


3. 企画立ち上げ〜完成間際まで

 企画の運営にあたって、私はあまりにも無知でした。他のフラスタ企画に参加したことはあるものの主催する側になったことなど一度も無かったので、まずは情報収集に努めました。
 企画したことのある人に全体の流れを聞いたり、お花屋さんを見つけて予約を取ったり、イラストレーターさんを探したり……。一通りの初期準備が整ったらTwiPlaを立ち上げ(はるるんさん本当にありがとうございました)、参加者を集めるために宣伝し続けました。広告塔になるために毎日千夜ちゃんたちをダイマしたり、デレステをやり込んで宣伝ツイートを紐付けしたり。

 

↓今回製作を依頼した大阪のお花屋さん
『GLU:CK floristik』

gluckfloristik.com


 また、より確実な情報を得るために、7th幕張の時に会場にいらっしゃったお花屋さんに直撃インタビューを現地で敢行しました。さらに後日何度も実店舗へ取材に伺って、フラスタに関する情報を伺ったり自分たちの企画の相談を受けて下さったり……大変お世話になりました。

 

↓幕張のお花屋さん『花未来』

www.hanamirai87.com

↓インタビューしたこと

 


 フラスタの全体構成はイラストレーターのゆみさんと協議を重ね、VelvetRoseの高貴で厳かで絶対的な"強さ"のイメージを出来る限り再現したいという結論に至りました。
 『VelvetRose』という名前に拘り、フラスタに使用するお花は薔薇のみ、そして薔薇を包み込む束の要領でベルベットの生地を使用することに決めました。
 最初は無知でイメージすら出来なかった企画が、徐々に形になりつつありました。

 

 参加者は当初、100人の予定でした。というか、「できるだけ多く集める」という曖昧なものでした。

 6月の時点ではそもそも佐倉さんと関口さんがライブに来るかどうか、名古屋と大阪のどちらに来るのかもわからない状況で、ふたりへのフラスタ企画はどこも立っていませんでした。でももし名古屋公演出演だとしたら、その時期から動かなければ準備に充分な時間を取れないかもしれない恐れがありました。そして、ほかにどこもフラスタ企画が立っていないなら、仮に企画がここだけだったとしても大丈夫なように出来るだけ多くの同志を募ろう、と考えていました。それに、「沢山の人がVelvetRoseを応援している」ということを佐倉さんと関口さんにお伝えできれば、おふたりも喜んでくれると信じていました。

 

 一般的に、協賛金募りのフラスタ企画は、お花代・イラスト代・パネル代など諸々を含めて10万円程度の予算が必要と言われています。当初は1人1000円で100人と考えていたのですが、全体構成を鑑みると、もっと沢山のお金が必要だということに早い段階で気付きました。
 というのも、薔薇の値段が予想以上に高く、必然的にお金を多く集めなければならない状況だったからです。大阪公演は2月中旬でバレンタインデーの次の日でした。そのため薔薇の需要がかなり高い時期で、1本400〜500円がザラになるほどの高騰ぶり。それを100本以上用意し、フラスタを薔薇で埋め尽くそうと考えていたのです。さらにベルベット自体が高級生地に分類されることも、お花屋さん経由で調べるまで知らなかったのです(無知って怖い)
 もちろん不足分は運営で負担するのは当然ですが、前述したように「たくさんの人を集めて超豪華なフラスタにしたい」という考えもあったため、とにかく人を集めることに専念しました。そして、参加者200人という大規模企画に至ったのです。

 流石に20万円まで増えると余りが生じてしまう恐れがあったため、協賛金は1人900円に下方修正。とはいえ心配していたお金の面は解決できそうだったので、そこからは「フラスタを素晴らしいものにして佐倉さんと関口さんに喜んでもらう」ために全力を注ぎました。

 例えば、使用花材を薔薇だけでなくイバラも追加。諸事情で本物の薔薇のイバラは使えなかったため、代用品のカラタチやサンキライを用意しました。
 ベルベットの生地は日本有数の繊維街『日暮里繊維街』にて選定。数回訪れて相談を重ねた末、以下の写真のような美しい生地を選びました。
 VelvetRoseの世界観に合致するような、やや重々しくも気品溢れる美しい生地でした。


日暮里繊維街

www.nippori-senigai.com

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間近で見るととても美しくて綺麗な生地でした

 

 フラスタに掲載するパネルは計5枚。「祝ご出演」、「佐倉さんと関口さん」、「ちとせちゃんと千夜ちゃん」、「参加者一覧」、「背景のお城」。うち4枚をイラストの外縁で切り出すオーダーメイド仕様にして、美しさを追求しようとしました。
 お花屋さんとの話し合いも、慎重にかつ詳細に進めました。メールのやり取りは20回以上にも及び、より良いフラスタを作るために綿密な話し合いを重ねました。


 こうして、フラスタ本体の準備は着々と進んでいきました。簡単に時系列をまとめると以下のような感じです。

2019年
6月12日 フラスタ企画立ち上げ
(ゆみさんへの依頼は受諾済でした)
7月11日 TwiPla設立
7月12日 『GLU:CK floristik』さんへフラスタ製作を依頼
7月21日 参加者100人突破
9月3日 幕張公演・『花未来』さんと出会う
9月7日 『花未来』さんへインタビュー
(他にも数回伺って企画の相談に乗って頂きました、本当に感謝です)
9〜10月 参加者の方へアンケート
10月6日 フラスタ全体図ラフ完成
10月27日 企画参加本確認開始
11月12日 参加者200人到達
11月25日 銀行振込案内開始
11月30日 PassMarket案内開始
12月7日 ベルベット購入


 集金方法についてもここで触れます。
 利用したのはPassMarketという電子サービスでした。PassMarketはYahoo!アカウントがあれば文面上匿名でも入金ができるため、参加者が企画運営に本名を知られずに済み、抵抗感が少なく参加しやすいと考えたからです。また銀行振込のルートを用意したのも、参加者の都合に出来る限り合わせたかったからです。

↓PassMarket

passmarket.yahoo.co.jp

 

 そして、花材が調達され、ベルベットも配送し、イラストも完成しつつあり、残りはパネル製作会社へデータを送るだけという段階まで来て、集金も大方が完了し残り数人というところまで漕ぎ着けました。本当に、あと一歩のところまで来ていたんです。

 

 

 ただ、その集金締切日が、奇しくもちょうど12月27日だったんです。

 

 

 

 

4. 12月27日~企画再始動

 ……正直、ここでも書けないくらいの状況に陥っていました。

 

 本気で心が折れました。

 

 ここまで頑張ってきたのに、この土壇場でなぜこうなってしまったのか。受け入れがたい現実に屈し、どうしたら良いのか分からず、私は数日間TLに浮上することすら出来なくなっていました。

 

 そんなときに助けてくれたのは、お花屋さんのメールと親友の言葉でした。

 同日の夜、『GLU:CK floristik』さんから一通のメールが届いていました(気付いたのは翌日でした)。

 内容は、「ここまで準備してきたものを楽屋花への変更に充てることが可能なら、継続して担当できる」というものでした。そして、こちらを気遣う言葉や謝罪の言葉まで並んでいました。お花屋さんだってここまでの準備で損失が少なからずあったはずなのに、私たちの方を気遣ってくれたんです。私は、その優しさに救われました。

 そして、閉じこもっていた私の異変を察して、何人かの親友達が立て続けに電話を掛けてくれました。私の住む場所まで駆けつけてくれた人もいました。そして、私はこう言われたんです。

 

どうしてこの企画を立てようと思ったのか。それを思い出せ

 

 私はすっかり忘れていたんです。「ちとせちゃんと千夜ちゃんを応援したい」という原初の想いを、「VelvetRoseを応援したい」という自分の目的を。

 だから私は立ち直ることができました。泣いている場合じゃない、頑張らなきゃ、と再び動き出す気力を取り戻せました。

 お花屋さんと親友、そして仲間達のおかげです。この場を借りてお礼を言わせてください。本当に、ありがとう。

 

 立ち直ってからの行動は自分でも驚くくらい迅速でした。


 即座に構成を見直し、ゆみさんとパネルの枚数や構成を相談しました。楽屋花全体図を新たに描いてもらうなど、とてもお世話になりました、ありがとうございました……。
 お花屋さんにも改めて楽屋花製作として引き続き担当して頂き、フラスタのときのようなVelvetRoseの世界観・雰囲気の再現を重視することを主眼に置き、さらに話し合いを進めました。


 また、イラスト色紙に関しては、様々な方の助言から「直接描かれているものなら気持ちがよりこもっているしおふたりも喜んでくれる」と考え、複数人の絵師さんにお願いして作ってもらうことを考えていました。

 実は元々、友人のお手伝いのためにコミックマーケット97の3日目のサークルチケットを持っていたため、「直接お話しに行こう」と咄嗟に思い付きました。ライブまで1ヶ月半しか残されていない中、無理を言ってお願いすることになるため、こちらの事情をしっかり説明し誠意を伝えたいと考えていたからです。
(もちろん、設営や頒布の邪魔にならないよう、開場前の猶予期間に伺いました。またこの時点ではあくまで事情説明と提案だけに留め、本格的な"依頼"はコミケ終了後に行いました。)
 12月30日、直接ブースに伺い絵師さん達とお話ししました。こちらの話を真剣に受け止めてくれて、本当に感謝しかありませんでした……。
 その後同日中、あらかじめ精査しておいた参加者の方へのお知らせを発表。参加者の方からも理解を頂けて一安心しました。

 帰省の電車の中で安心すると同時に、今度こそ企画をやりきるぞという覚悟を、心に決めたのでした。

 

 


5. 年明け〜楽屋花・プレゼント完成

 令和元年から2年に変わり、再始動した企画もどんどん進んでいきました。

 改めてパネル製作をプリオに依頼。12月27日の時点では「この後すぐ注文する」というタイミングだったので、料金や予約は発生していなかったんです。内容を修正し、このまま楽屋花製作へ直結できる態勢を整えました。
 プリオさんは、発注システムが簡潔で、データ入稿の不備がなければ数日でパネルを作れるスゴイ会社でした。値段も想定より安価でびっくりしたほどです。

 

↓プリオ

www.oleshop.net

 

 さらに、「フラスタが完成していたときの全体図もやはり贈りたい」という考えがあり、「フラスタ全体図」と「参加者一覧」をラミネート加工プリントとしてプレゼントに入れることにしました。こちらはキンコーズさんに依頼しました。

 店舗で直接目の前で製作されていく様子は、見ていてとても新鮮でした。スタッフの方々は皆さんとても優しく、丁寧に指示をくださり、思い描いていた通りのプレートを作ることができました。感謝感謝です…。
 ちなみに楽屋花に掲載した「祝御出演」プレートもここで作りました。

 

キンコーズ

www.kinkos.co.jp

 

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クオリティが高く、出来たときはニヤニヤが止まりませんでした

 また、色紙を入れる箱は額縁屋さんで購入。真っ白な箱だと殺風景だと思ったので、急遽イラストレーターさんの名前をプリントしたシールを作成しました。こちらもキンコーズさんで製作。

 

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貼る瞬間が最も緊張しました(1敗)。

 

 プレゼント一式を入れるには、紙袋のような入れ物が必要でした。そこで包装用品の専門店を探し、丁度良いサイズの紙袋を購入。同時に、色紙を保護するシートなども手に入れました。思っていたより様々な種類の紙袋があり、またプチプチ(緩衝材)や小さい箱、中型の封筒など、メルカリや同人製作を行う方にはとても役に立つものもたくさん売っていたのでおススメです。

↓包装用品専門店 シモジマ

www.shimojima.co.jp

 

 

 


 2月12日、お花屋さんからついに楽屋花完成の報せが届きました。
 メールを開き、飛び込んできた画像に私は目を奪われました。



 

 

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 本当に、本当に素敵な楽屋花でした。


 大変なことはたくさんありました。企画変更を余儀なくされ、一度は完全に心が折れました。

 それでも、ようやく形になりました。


 完成したという事実を反芻したとき、涙が止まらなくなりました。私は家でひとり、ただひたすらに泣き続けていました。
 生まれて初めてのフラスタ(楽屋花)企画運営。紆余曲折はあったものの、楽屋花を贈るというミッションは無事に達成されたのでした。

 


 そして、プレゼント(お品物)も購入し、色紙も順調に我が家へ到着。自分の旅行バッグの他にどデカイ紙袋を二つ持って、喜びと希望と期待を胸に、私は大阪へ旅立ったのでした。

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当日は雨の予報もあったため、これを二重のポリ袋で覆い、さらに別の紙袋に入れて完全防備。万全の状態で大阪まで運びました

 

 

 

6. ライブ当日


 まずは自分の住む千葉から大阪まで、紙袋や中のプレゼントに細心の注意を払って現地まで運びました。雨の予報があったため濡れずに持っていくことが心配でしたが、現地では雨が降っておらず心底安堵したのを覚えています。
 現地はすでに大混みで、ゆみさん達との合流がとても大変でしたが、プレゼントの最終確認を終えることが出来ました。プレゼントや色紙が全て揃ったとき、「ようやく揃った」という安堵に包まれ、私たちは喜びを分かち合っていました。

 

 ところが、プレゼントBOXがあったチケット売り場2付近に戻ったとき、喜びは一瞬で絶望へ変わります。

 

プレボが無い

 

 さっきまでズラリと並んでいた段ボール群が、全て無くなっていたんです。
 実は、プレゼントが全て揃ったのは午後3時ごろ。丁度その時刻は開場時刻で、その際にプレゼントBOXは会場内へ移動してしまったようでした。

 想定外の事態に困惑し慌ててスタッフに聞いたところ、「中に入れば投函できる」と言われ、ひとまずはホッとします。
 私自身は連番者の到着を待つため、16時半まで会場入りはしないつもりでした。ですがゆみさんやはるるんさん達から「ボタ餅さんが入れてください!」と一任していただいたため、最後の大仕事"プレゼントBOXへの投函"という大役をやらせていただいたという次第でした。

 

 そして入場後、プレゼントBOXがちゃんとあることに安心し、紙袋を丁重に入れたのでした。

 

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大仕事が終わった瞬間。ここまで来るのが、本当に長かった

 8ヶ月に及んだ『VelvetRoseフラスタ・楽屋花企画』。最後の締まりが微妙になってしまいましたがこうしてその役目を果たし、全ての贈り物を届けることが出来たのでした。

 プレゼントBOXに投函したとき、意外にも私は冷静で、「ようやく、ようやく念願が叶った」という安心感でいっぱいでした。喜びはもちろんあったのですが、大仕事を終えた後のライブが俄然楽しみになってしまい、そちらの方面へ心を躍らせていました。開演10分前、改めてプレゼントBOXを一瞥した私は、これまでの感謝を視線で送り、自分の席へ向かったのでした。

 


 そして、あの最高のライブを目撃したのです。

 


 『Fascinate』が終わり、『双翼の独奏歌』が終わった後のMC。ブチ上がりすぎて火照りまくった身体を椅子に預けた私は、ふとVelvetRoseのことを思案しました。
 思案した、その瞬間でした。

 

 涙が止まらなくなったんです。

 

 『Fascinate』のパフォーマンス中は、高まって泣く暇すら無かったからでしょうか。それが終わって落ち着いた後、堰を切って留め泣く涙が溢れて、私は顔を上げることが出来なくなってしまいました。


 色んなことがありました。本当に、色々ありました。

 大変なことも、嬉しいことも、つらいこともありました。

 それでも、VelvetRoseのために、千夜ちゃんと関口さんのために、ちとせちゃんと佐倉さんのために、全力を尽くしてきました。


 そんな私を待っていたのは、これ以上無いほど素晴らしい最高のステージでした。

 だから、思ったんです。


 頑張ってきて良かった、と。この瞬間のために、私は頑張ってきたんだ、と。

 

 そして初日の終演後、TLはVelvetRoseを賞賛する声で溢れかえっていました。「カッコよかった」「曲が強かった」「ちとせや千夜に興味が湧いた」「コミュを観ようと思った」そんな声がたくさんありました。
 私の周りでも、嬉しいことがたくさんありました。ライブ1週間ほど前から私は、『Fascinate』のコミュを宣伝し続けていました。千夜ちゃんとちとせちゃんへの印象や『Fascinate』の楽曲は、コミュを観たか否かで本当に変わります。だからこそ、大阪で初披露となる『Fascinate』を観る人全員に、コミュを観てもらいたかったんです。そうすれば、全員が初見の『Fascinate』を最大限楽しめるはずだ、と信じていたからです。

 結果、「ボタ餅さんが勧めてくれたからコミュを観た、おかげで楽しめた」という声をいくつも頂けたんです。初日の時点では観てなくても、その後コミュを観たら2日目で楽しめたという声もありました。
 そんな身近な人からの声と、賞賛いっぱいで埋まったTLを見て、本当に嬉しくて。初日の打ち上げまでの道中で、私はTwitterを見ながら泣いていました。

 

 夢見ていたんです。

 皆がVelvetRoseのことを認めてくれて、VelvetRoseの舞台を楽しんでくれて、「千夜ちゃんとちとせちゃんが好きになった」と言ってくれることを。最初期から応援し続けていて、推し続けて、そうなることをずっと望んでいたんです。それが現実で起こっていて、本当に嬉しかったんです。


 自分のしてきたことが影響を与えたなど、傲慢なことは言えません。何よりいちばん頑張ったのは声優さん方で、それは絶対に揺るぎません。

 でも、ほんの少し、0.1ミクロンだけでも。自分の頑張りが、報われた気がしました。

 

 だからこそ、関口さんと佐倉さんに心の底から感謝しました。初ステージが京セラドーム大阪、5万人の観衆の前という、通常では考えられないほどのキャパシティ。そのプレッシャーは想像を絶するほどのはずです。それでも非の打ち所が無い最高のパフォーマンスをこなしたのは、私たちの知らないところで凄まじい努力をしてきたことを物語っています。また、関口さんと佐倉さんが千夜ちゃんとちとせちゃんへ寄せる想いは以前から凄く伝わってきていました。おふたりが支え合いながら頑張っていたことも、伝わってきていました。

 佐倉さん、関口さん、本当にありがとうございました。おふたりのおかげで、全世界が魅了されました。素晴らしいステージをありがとうございました……!

 涙を流し続ける私の心の中は、VelvetRoseへの感謝でいっぱいでした。ここまで応援し続けてきて良かった、この最高のライブに立ち会えて良かったと、改めて嬉しさを感じたのでした。

 

 

 


7. おわりに


 ここまで長文を読んでくださり、ありがとうございました。
 とにかく私が言いたいのは「VelvetRoseありがとう」という感謝に尽きます。色んなことがあって、色んなことをやった結果、ライブへの感情がひとしおなものになったということです。このライブが一生忘れられない経験になったのも、VelvetRoseのおかげです。

 


ありがとう、千夜ちゃん、ちとせちゃん。ありがとう、関口さん、佐倉さん。

 

 

ありがとう、VelvetRose。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

p.s. 関口さんのツイートと佐倉さんのチョクメ見て泣いてる

ボタ餅